GHQの意図
GHQの意に沿う教科書を使い、子どもたちに平和教育をする。しかし、問題は教育する立場の教師です。ほとんどの人が軍隊から帰ってきた人です。若い男というのは、もうほとんどがそうです。
それでマッカーサーは、男も女も関係なく、この若い教師たちに「もっと自由に発言しなさい」と言いました。その意図は「天皇家に対して少し厳しいことを言え」というものです。それまで日本人はずっと天皇家をあがめていましたから、先生方も、そんなこと言いたいわけではありません。実際、私は小学校のときに、陛下の話はほとんど聞いた覚えがありません。言いたくないのです。
ところが、この「発言の自由」に目を付けたのが共産党です。天皇廃止とか、東京裁判だとか言い出して、日本の国民は初めてウォッと盛り上がって行きました。それを見たマッカーサーは「しまった」です。「天皇についてものを言えと言ったのは失策」ということで、マッカーサーは必死になって元通りに戻そうとした。しかし遅かった。共産党は言論の自由をもとに「皇室廃止」と主張した。
キリスト教優遇政策
マッカーサーは、日本の神道や仏教に対して、こんなものは教科書に絶対出すなよとやった。それで、キリスト教の教えをもっともっと教科書の中に流しなさいと指示しておりました。
それで、ある事件が起こります。日本の教科書をどうやって手に入れたのか知りませんが、アメリカ本土のジョージア州にキリスト教のご婦人がおられて、「日本の教科書を読んでいると、何かイエス・キリストを冒とくした文章がある」と抗議をしたそうです。そこには、キリスト教で言われている話はすべて信じられるわけではない、といった趣旨のことが書いてあったそうです。
それを見たそのご婦人が、タイプライターで東京のマッカーサー元帥に「キリスト教徒として非常に恥ずかしい。元帥も熱烈なるキリスト教徒だと信じておりますが、なぜこのような文章が日本の新しい教科書に出るのですか」と文句を言った。
驚いたマッカーサーは、文部省担当の高官を呼びつけます。その人はスタンフォード大を出ていたニュージェントという人でした。マッカーサーは「ニュージェント、これは何だ」と問いただします。
ニュージェントは驚き、「これは私も気づきまして、日本の業者に書き直すように指示していたのですが、書き直しておりませんでした。私の見落です。元帥、私は責任を取りますから、いつでも首にしてください」と言ったようです。
マッカーサーは自分のことを宣教師だと思っていた。だからこそこんなこと許せないと思ったのでしょう。

ザビエルの右腕
マッカーサーが日本にいる間、フランシスコ・ザビエルというイエズス会の宣教師が日本の鹿児島来て、ちょうど四〇〇年というので式典がありました。ザビエルが鹿児島に来たのは一五四九年。すなわち一九四九年はちょうど四〇〇年にあたるわけです。
その目玉は彼の右腕。すなわち、聖遺物としてローマから彼の右腕が日本に運ばれ、各地を巡ったのです。皆さん、腕ですよ。右腕が聖遺物として大切に保存されている。それだけでも歴史の話として非常に面白い。これを多くの人が見に来て、各地で記念行事が開かれた。
GHQも当然、スポンサー状態です。これでまた、キリスト教が日本国内で大いに盛り上がった。この勢いに乗じて、日本の仏教や神道をできるだけ潰してやろう、そしてその上にキリスト教徒の国を作ろうと思ったのです。
しかしこの試みは完全に失敗しました。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2021年5月下旬号 教科書検定-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

