誰が吸っているのか
アメリカでは学歴が高いほど、たばこに対して嫌悪感を持っています。例えば、スタンフォード大ですが学内でたばこを吸っている学生や先生を見たことがありません。吸っているのは大抵、観光客です。白い目で見られております。
日本の場合はまた違っているのですが、アメリカでは大学に入ってくるような人たちはもうほとんど吸わないし、たばこを毛嫌いしております。「あんなに健康に悪いものを吸うなんて、知性的でない」「自分の健康を管理できていない」などと考えているのです。
学歴だけで見ると実際にそうなのです。大学に行かず、中学校や高等学校だけを卒業した人はアメリカに大勢おられますが、そういう人たちは大卒者と比べると、喫煙率が高いことが知られています。
収入格差
収入も関係しています。収入が低いほど、たばこを吸う傾向にあるのです。年々、値段が高くなっていくたばこを、なぜ低収入者が吸う傾向にあるのか。明確な因果関係はわかりませんが、ここでもやはり教育や家庭環境が影響しているのではないかと思われます。また余暇の過ごし方も関係しているのでしょう。喫煙は、それ以外の嗜好品やゴルフといったスポーツと比べれば、安価でしょう。だから低所得者であっても手が出しやすいのかもしれません。
しかし喫煙者は米社会においてどんどんと肩身の狭い状況に追いやられております。例えば、企業側はたばこを吸うか吸わないかで、雇用するかどうかを決めております。理由は簡単です。たばこを吸うと会社の保険料が高くなるからです。
病気で休む可能性も高いでしょうし、オフィスの外に出て吸っているのはイメージも悪いでしょう。かといって部屋の中で吸われたらたまったものではありません。それでアメリカの会社は「もしたばこをやめるのだったら奨励金を出すよ」としています。それでやめる人もかなりおります。
喫煙者の弁明
一方、喫煙者の立場からすれば、たばこを吸わない人も、お酒やコーヒー、紅茶などを飲んで息抜きをしているではないか。たばこもそれと同じだ、などと言ったり、たばこは一種のコミュニケーションであり、見ず知らずの人と会話もできるし、それが知人であれば、喫煙所は情報交換の場所になっている、などと指摘する人もおります。
そう思う人にはそうなのでしょうし、否定するつもりもありません。私もたばこを吸っている友人がいますが、彼らが嫌いというわけでは全くありません。箱からたばこを1本取り出して、ポンポンとやってくわえて、マッチやライター、ジッポーなどで火をつける行為自体が気持ちよい、と話してくれたこともあります。
皆さん、好きなことをするというのはストレス解消という点でも、精神的な心の安らぎを得るにも重要です。しかし、たばこに関わる最大の問題はおそらくあの煙なのです。コーヒー好きもケーキ好きもいますが、飲んでも食べても煙は出ません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
タバコ利権とファシズム(2020年2月上旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。