報道の自由
あらゆるメディアも言論も徹底的に監視し、統制している国があります。中国です。この国はかなり繊細なレベルまでメディア戦略を練っております。「世界報道自由度ランキング」にて中国は世界180位前後だったと思いますが、これは裏を返せば、いかに情報統制がうまくいっているかを示すものであると言えるでしょう。ちなみに日本はこのランキングで67位、アメリカは48位です。
中国政府による情報統制といえば「国内向け」のものをイメージする人が多いと思いますが、中国は「国外向け」にも極めて巧妙なメディア戦略を進めております。それは、お金でもって「情報を買う」、「情報を作る」といった形で進められています。情報を発信する人や組織を支援したり、買収したりするという方法です。破産しそうな大手新聞社や放送局に対して中国からのお金がジャンジャンと入ってきているようです。テレビ以外の媒体が数多く誕生している中で、この傾向は今後もますます進むでしょう。
中国のお金が入ったメディアは当然のことながら、中国の悪口を言えません。言ったら支援が止まり、倒産でしょう。こうして中国の悪い部分は表沙汰にならず、隠されたままの状態が続きます。そして中国にとって都合の良いことだけが発信されていくのです。やがては「中国偉大なり」となるでしょう。情報統制が世界で最も進んだ国が、世界のメディアを席巻しているのです。
プロパガンダ
中国の歴史は3000年、4000年と続いてきました。中国を宇宙の中心に据えて、その周辺を属国として支配してきた歴史があるのです。その遺伝子でもって外交をしているのですから、簡単には太刀打ちできません。日本のようにオタオタやっている国や、アメリカみたいに絶えずけんかしている国は、中国3000年の歴史には勝てません。
私たち日本人は常にアメリカからの情報に浸っておりますので、良くも悪くも対中免疫力はある方だと思いますが、そうではない国は中国のイメージ戦略の思うツボでしょう。親中寄りの政権になれば、中国からのお金がたくさん入ってきます。そうすると、中国寄りのニュースしか流れなくなっていきます。欧米諸国がいかにダメで、中国がいかに素晴らしいかが、その国の人々の頭に刷り込まれていくのです。
莫大な経済力を背景としたプロパガンダ、これが中国による情報戦の強みです。単なるプロパガンダではなく、圧倒的な札束でもって世界中のメディアを飲み込んでいくのです。その実態を調査したり、取材したりすることは非常に難しいでしょう。調査協力や取材協力をして、万が一それがバレたら、お金がもらえなくなります。会社は倒産に追い込まれますよね。
西鋭夫のフーヴァーレポート
言論の自由(2019年6月下旬号)-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。