奇跡の薬
メディカル・マリファナが大きな注目を集めております。アメリカではほとんどの州で合法化されており、合法化していないのはあと2、3州ほどだったと思います。
なぜメディカル・マリファナがヒットしているのでしょうか。第一の理由はがんの治療です。がん治療をされた方はご存知でしょうけれど、これはものすごい吐き気を伴うわけです。実際に吐いてしまいますし、食べ物を見ただけでまた吐き気が出てくるのです。それで食物を食べることが出来なくなりますから、体力がなくなっていきます。
この吐き気を止めるのがマリファナです。「何か食べたい」という気持ちにもさせてくれます。食べると体力が戻ってきますから、がんと戦う勇気も、治療に耐える気持ちも回復していきます。
てんかん発作
もう1つはてんかん発作などへの治療薬としての注目です。アメリカのある大手番組が特集を組んでおりましたが、生まれて一年も経たない赤ちゃんのてんかん発作に対して、マリファナが使われておりました。
アメリカではもう何十年もてんかん発作に対する研究が進められていますが、マリファナの葉っぱと茎を絞り、いわゆる「ハイ」になる要素を取り出した液体を治療薬などで使い始めました。カンナビジオール(CBD)と呼ばれるものです。
様々な種類があるので使用には気をつけなければなりませんが、これを赤ちゃんの口に2、3滴落とすと、けいれんが止まったのです。1日に何度も発作を起こしていた赤ちゃんです。それが止まったのです。実況中継で見ておりました。私も最初は信じられなかったのですが、両親らは感動で大泣きしておりました。
そんなニュースに接するたびに、米国ではマリファナに対する悪いイメージがどんどんと払拭されていきました。この流れにのって、大きな反対も起きずにメディカル・マリファナが合法化されていきました。
反戦のシンボルから医療へ
ところでマリファナは、1960年代、70年代と反戦のシンボルでした。私はベトナム戦争の初期の頃からアメリカにおりましたが、あの時のアメリカは反戦運動が盛んで大変でした。大学では朝から晩まで反戦のフォークソングが流れており、マリファナが禁止になってからは「あの戦争をやっている政府がこのマリファナを禁止するなら、俺たちはそれをわざと吸ってやる」といったように、反戦の意味を込めて吸っておりました。パーティーに行くと教授たちまで吸っていました。
当時の私は22歳でしたが、マリファナに対しての違和感はありませんでした。それが危ないとは誰も思っていないです。だからこそ「反戦」のシンボルとして、マリファナの葉っぱがあちらこちらで使われておりました。
西鋭夫のフーヴァーレポート
大麻ビジネス(2019年5月下旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。