国定教科書
中央集権的に教育の中身を決めていく。国が教科書の内容を事細かに確認して、チェックしていく。方針にそぐわない記述は削る。修正を求める。
情報がこれだけ豊富にある中で、こんな教科書を使っていたら国が滅びますよ。危ういです。動きが取れなくなってしまいます。子供たちの豊かな発想、自由な発想を伸ばすことなど到底出来ないでしょう。ITの世界は無限に広がっています。その用い方も含め、教育を行う現場に任せたらよろしい。どれだけ面白い教育ができるでしょうか。先生たちも競い合いながら、教え方も、授業内容もどんどんと向上するのではないでしょうか。
そう考えると、なおさら日本政府のやっていることが不思議でなりません。国はどうしてそれぞれの地域や先生に教育作りを任せないのでしょうか。教育の枠を作りすぎたので、それを壊すのが怖いのでしょうか。半世紀以上、国によって管理された教育がずっと続いています。その結果が今の日本なのです。皆さん、満足されているのですか。そんなはずはないでしょう。
人材の宝庫
一方のアメリカではそれぞれの州が絶大な力を持っています。教育からさまざまな行政サービスまで含め、アメリカ全土で全て同じ、ということはありません。それぞれの州が独自に決めているのです。自分たちでより良い州を作るという実践ができているのです。
州を引っ張るリーダー、すなわち日本でいう知事ですが、彼らは非常に優秀です。良い政治をすると評判もワッと広がります。そして、みんなで応援してくれます。レーガンさんは偉大な大統領だと言われておりますが、そのレーガンさんはカリフォルニアで州知事を二期されました。
そんな大統領級の知事たちが、アメリカにはわんさかいるのです。アメリカの人口は約3億2500万人で、日本の人口の約2.5倍ですが、人材の層、という点では日本の十数倍ほどいるのではないかと思います。次期大統領候補を考えてみても、トランプさん以外の共和党を代表する人物がごろごろおりますし、その対抗馬もたくさんいらっしゃいます。
お金の用い方
長い間、アメリカにおりますと、アメリカの教育にかける熱意を肌感覚で感じることができます。アメリカでは才能にお金を出すのです。惜しみない額です。その文化が根付いております。
日本の天才、イチロー君はオリックスを辞めてこちらに来ましたが、年俸は何十億円レベルになりました。これはいかなるスポーツの世界でも同じですし、学問の世界でも同じです。どれだけお金を稼いでいるかで評価されるのです。
稼いだお金は貯めずにまたどんどんと使います。使途はもちろんさまざまですが、お金持ちの多くは、今度は社会のためにと、巨額のお金をどんと寄付するのです。その額は想像を超えるほどです。寄付の額もアメリカ社会では評価の対象となります。裕福な人ほどどんどんと寄付をする文化があるのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年3月下旬号「揺らぐ日本の人材育成」-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。