中国版ソフト・パワー
中国もソフト・パワー外交を徹底して行っております。
中国は天安門事件で最悪のイメージを作ってしまいました。しかしそれを今、必死に覆そうとしているのです。1993年にはラジオの放送枠を購入し、英語によるラジオ放送を開始しております。
対外宣伝には年間およそ6,200億円の予算を投じております。2010年、国営新華社通信は「中国版CNN」を目指すために、英語による国際テレビも開始しました。意識しているのはもちろん英語圏の国々、特にアメリカです。対米外交の一重要な手段としてソフト・パワーを使っているのです。
親中国圏の構築
欧米社会に対しては英語での発信に力を入れておりますが、アジア諸国においてはまた別な形でソフト・パワーを使っております。南太平洋の小さな島々を味方にしようと、ジャーナリストを招聘したり、経済援助を行ったりしているのです。中国は南シナ海で領土・領海問題を抱えておりますが、そのもっと先の南太平洋にて工作活動を展開しているのです。
それらの国々は昔、日本とお友達でした。第一次大戦前はほとんどがドイツの植民地だったわけですが、ドイツが負けたことで日本が譲り受けたのです。日本は学校も作りましたし、インフラも整えました。その甲斐あって、今でも日本語を話すおじいちゃん、おばあちゃんもいらっしゃいます。
第二次大戦後には、今度は日本に代わってアメリカが入ってきました。しかしアメリカは小国に興味がありません。ハワイにしか興味を示しませんでした。何もしないアメリカを横目に、中国が積極的なソフト・パワー外交を展開してきたのです。
情報戦
鍵を握るのはサイバー空間です。これをいかにコントロールするか。インターネットを介して、情報が瞬時に世界中に拡散する時代です。国内外のさまざまなニュースが、個々人や組織によっていつでもどこでも拡散する時代となりました。放送局だけがそうした力を持っているとは限らないわけです。
中国は人口、領土の広さからいって、再び強大な帝国になる力を秘めております。それと同時に、地方の貧困や、権威主義的な政治体制という問題を抱えています。それらが一斉に世に噴出したらどうするのか。中国共産党は頭を抱えているでしょう。だからこそ中国は自由なインターネットを認めず、徹底的な検閲を続けているのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年10月下旬号「米中文化戦争」-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。