From: 岡崎 匡史
研究室より
今日は、招集令状を紹介します。
召集令状は「赤紙」というイメージが根付いていますが、「白紙」「青紙」「紅紙」というように、招集する際の目的によって種類が異なります。
また、当時の日本は徴兵制が敷かれていたので、若者たちは原則として陸軍(2年間)が海軍(3年間)に服役しなればなりませんせんでした。
兵役期間に、軍隊に入隊することを示す書類を「現役兵證書」(げんえきへいしょうしょ)と呼びます。
実際の「現役兵證書」には、どんなことが書かれているのか。なお、読みやすさを考慮して、カタカナを平仮名に改めました。
心得
一、本證書の取扱
1. 入営の際は本證書を携行すべし
2. 本證書を紛失したるときは其の下附を市区町村長を経て連隊区司令官に願出すべし
二、入営不能
現役兵にして傷疾・持病・犯罪または所在不明等のため所定の期日に入営し難き場合に於ては本人(本人届出を為し能はざるときは家事擔当者より)より連隊区司令官宛の届出を市区町村長を経て入管当日迄に連隊区司令官に差出すべし
但し傷疾病に因る者は医者の診断書(病名、原因、経過、現症、静養を要する期日及入管し難き事由を詳記したるもの)を所在不明者は警察官吏又は憲兵の證明書を願書に添付するものとす
三、事故止み
前号により届出てたるもの事故止みたるときは直に市区町村長を経て連隊区司令官に其旨届出へし
四、入管延期
入管に際し父母妻子の疾病危篤又は死亡同一戸籍内にあるものの死亡本人住家の火災、流失又は倒壊其の他之に準ずる天災の為入管延期を願はしとする者は連隊区司令官宛の願書を本籍地の市区町村長に差出すべし
但し父母、妻子の疾病危篤の場合にありては医師の診断書等を其の他の場合にありては市区町村長警察官吏又は憲兵の證明書を願書に添付するものとす
五、転籍
現役兵入営前転籍したるときは戸籍の届出と同時に現役兵證書の交付を受け居る旨を市区町村長に届出て其現役兵證書を当該市区町村長に差出すべし
六、寄留旅行
現役兵入営前寄留若しくは七日以上の旅行を為さんとする時は常に行先其他必要なる事項を同一世帯の家族(戸主を含む)中家事を擔当する者に詳知せしむ家族なき時は本籍市区町村内に於て招集其他軍衙の命ある時之を通報すべき者(二十歳以上の者に限る)を定め連署を以て市区町村長に届置き且其者に自己の所在を詳知せしめ置くべし
七、罰
現役兵にして故なく入営の期に後れ十日(戦時にありては五日)を過ぐるときは禁錮の刑に又は所定の届出を為さざる者及通報人相当の事由なくして招集の命を通報せず若くは遅滞したるときは処分せらる
八、入営旅費
入営の為旅行を為すものに対しては居住地市区町村内に於て居住地より営所に至るにお旅費を支給せらるるものとす 但し三里未満の旅行に在りては之を支給せず
九、入営の際
青年訓練修了に関する修了證書又は證明書及青年訓練手帳学校教練の合格證明書(幹部候補生志願のため呈出者は不要)を携行すべし
十、単独入営
朝鮮、台湾、満洲の部隊に入営するものにして其地附近に居住する者は集合地に集合することなく直接入営部隊に至らんとするものは集合地到着期日迄に単独入営届を本籍地市区町村長を経て連隊区司令官に差出べし
ー岡崎 匡史
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。