立ち入り禁止区域
残酷な話だが、政府はいまだに本当のことを言っていない。東日本大震災に伴う原子力発電の事故から大きな被害を受けたのは、間違いなく福島の人たちです。福島第一原発から半径20キロ圏内は、いまだ立ち入り禁止です。
これがいつまで続くのか。この地域に未来があるような話をする政府関係者は多いが、半径20キロをきれいにするまでに、果たしてどのくらいの時間を要するのだろう。片付けた後のゴミはどこに持っていくのだろう。原発からは汚染水がずっと出ており、タンクに貯蔵しているが、その水も捨てられない。
帰れない大勢の人々の希望をなくしてはいけない。しかし、政府高官たちが語る言葉には魂がなく、信頼性にも欠けております。たくさんの仮設住宅がありますが、そこでの生活も長い人ですでに4、5年でしょう。彼らの命と生活を、政府はどのように考えているのだろうか。
原発に関わる問題
廃炉作業にも全く目処が立っていません。原子炉内の状況は、放射線量が高過ぎて入ることができない。ロボットたちに希望が託されていますが、そのロボットたちも現在のところ全て返り討ちにあっています。
国民の税金も投入され続けています。延々と使っている状態です。それでも解決の目処は立っていません。ガンに関する裁判なども始まるでしょう。日本人だけではありません。トモダチ作戦に参加した米兵たちが訴え始めたら、日本は、電力会社はどうするのでしょう。
原発に関するまともな議論も出来ない。政権にとって都合の悪い話は、「偏っていますよ」「政治的に中立でないですよ」などと、政治家から指摘されるという、なんともお粗末な社会になってしまった。これでは、骨のあるジャーナリストも育たないでしょう。
忘れてはいけない
原発事故は多くの人々の人生を変えました。原発事故から5年が経ちましたが、現状はほとんど変わっていません。原発に関わる問題が多すぎて、複合的に絡み合いすぎて、なかなか本当のことが見えてこない現状がある。
そんなとき、私たちはどうすれば良いのでしょうか。私は、歴史から学び取っていく姿勢が大切だと思います。スリーマイル、チェルノブイリだけではありません。ビキニ島でのことを思い出して下さい。あの時に何が起きたのか。そのときのことを記憶している人もほとんどいなくなった。あの事件の教訓とは何だったのか。福島の今と重なることも多いのではないか。
風化に抗うため、力強いマスコミを育てるため、私たちはフクシマのことを忘れてはいけない。せめて心の中では、批判的な問題意識を持ち続ける必要があると思います。政府は本当のことを言っていないのですから、隠しているのですから。今ある情報が全てであると信じてはいけない。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 10
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。