学歴社会
アメリカン・ドリームがあるなら、ジャパン・ドリームはあるのか。
残念ながらありません。日本は完全な学歴社会です。有名校を出ていないと、そもそも出世はあり得ません。大手企業も雇ってくれません。以前はあったかもしれません。明治維新の時や、大戦で敗れた直後の日本です。しかし今、ジャパン・ドリームはありません。
代わりに、今の日本で起きているのが「頭脳流出」という現象です。学歴なんぞ屁とも思わない優秀な中高大生たちが海外で修行し、海外でお金を稼いでいます。若者は応援したいが、日本全体としては非常に大きい問題です。人材が枯渇します。日本国内に魅力がなく、経済が落ち込み、若者たちが根付かない国となっていく。
官僚システムの誕生
戦後直後のジャパン・ドリームによって、高い経済成長を実現し、一般の人々の暮らしも良くなっていくと、その体制を守ろうとする勢力が現れます。それが大物政治家や高級官僚たちでした。
彼らは、一般には入り込むことの難しい官僚システムを作りあげ、人脈が幅を利かす世界を作り上げた。このシステム下では、いかに頑張ろうが、いかに優秀な頭脳を持っていようが、有名校やコネがないと上位層に上り詰めることはできません。
私は16〜22歳まで大阪で育ちましたが、ここには「がめつい」という言葉があります。すなわち、ドタっと道で転んだら、素手で起きるなよと。せめて土でも握っておけよ、という意味です。がめついていけよと。しかし、今ではいくらがめついてもダメでしょう。
留学のススメ
官僚たちが作り上げたシステムの要は、規制と均一的な教育体制です。規制は「がめつい」優秀な若者たちの意欲を奪い取りました。働けど、豊かになれない。そんな意識を日本全体に植え付けました。
均一的な教育の弊害はさらに大きい。才能ある子どもたちが、文科省により一律に規定された学力水準の中で平均化されてしまった。個性を伸ばすのではなく、個性を叩いて、伸ばさない教育が広まりました。
今の若い子たちを見ると、かわいそうで仕方がない。「外へ出ろ」と声高に叫びたい。豊かな子どもたちの才能は開花されずに、携帯電話と通勤電車の中で埋もれ、忘れられたままです。
安倍総理は「一億総活躍」なんてことをお話になった。活躍の前に、才能を伸ばす教育をしないといけないのではないか。規制だらけの日本には活躍の場もなく、才能にも蓋がされた状態です。これをなんとかしないといけない。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年1月上旬号「アメリカの貧困」− 2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。