日本人の英語力
「日本人と英語」は非常に重要なテーマです。我々日本人は、1853年のペリー来航以来、欧米諸国の知識を吸収するため、必死に英語を勉強してきました。それは今も変わっていません。高校や大学の入試で英語は必須科目です。
ところが、日本人の英語力はアジアで最低のレベルです。TOEFL(トーフル)では、シンガポールが常に上位です。日本の下には、カンボジアやラオス、タジキスタンなどが続いています。日本企業による海外進出は増えていますが、英語力だけは世界の平均以下のようです。
現状を分析してみると、英語の学び方がそもそも間違っているのではないか。そう思わざるを得ない。
英語との出会い
英語の学び方は、私が勉強した60年前とは大違いです。当時は、テープもコンピューターもない時代です。CDももちろんありません。音が聞けるのは、アメリカの映画を見に行った時だけでした。
高校では薄い紙で出来た豆単1冊を丸暗記しました。豆単とは、ポケットに入るほどの小さな単語帳です。3年間、直に英語を聞いたことはありませんでした。英語のテストと言えば、文法と単語が中心です。単語の試験は毎週ありました。
ところが、ずっと後になって、英語を実際に話さないといけなくなった。言葉に出すことを余儀なくされる中、話せないと意味がないとも思い始めました。留学時代のことです。当時のアメリカには、字が読めない人が大勢いましたが、皆さん、英語を話していたわけです。
文科省の失態
しかし、ただ会話が出来れば良い、というわけではありません。この点については多くの日本人が錯覚しています。当時からこの傾向は変わっていません。文科省も「話せる英語」が立派だと勘違いしています。
英会話ができるようにと、英語圏からたくさんの先生方を呼び、小学校から英語の授業を始めました。これは浪費です。国を挙げての大出費で、費やされた額はこの20年ほどで一兆円は超えているでしょう。英語の「漢字」とでも言える「単語」を覚えることには見向きもせず、会話ばかりが重視されました。
私が言っていることは何も難しいことではありません。簡単な例を出しましょう。日本について学ぶために、日本にやってきた外国人が、「学校では日本語会話を一生懸命に勉強してきました」と言ったら、皆さんはどう思いますか。漢字も文法も知らないで、日本について学ぶことはできませんよ。日本語での会話が得意でも、使い物にならないですよ。と考えるでしょう。
話すことだけに集中している日本人の悲劇に、一人でも多くの人が気付いて欲しい。そう願っています。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年10月下旬号「日本人の英語力」− 1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。