天野貞祐
共産主義と闘っている新しい日本は、新しい文相を必要とした。
天野貞祐は、20年間に亘り哲学教授を務め、吉田首相が深く尊敬している人物であった。天野の任命につき、吉田首相は、1950年4月9日、マッカーサーに「ご承認いただければ誠にありがたく思います」と直筆の手紙を書いていた。
天野は、京都帝大卒業後、ドイツに留学し、カント哲学の造詣を深めた。学習院教授の後、京都帝大教授になる。1964(昭和39)年、獨協大学の初代学長。
天野貞祐
天野への期待
マッカーサーの承認を受けた後、吉田は記者団と会見し(5月8日)、
「東北大学に限らず、最近各地の大学などでいろいろ問題が起こっているのは誠に遺憾だが、幸いに有能、練達な天野文相を迎えたからやがて適切な措置がとれるものと期待する」
と発言した。
訓令
5月13日、天野文相は、民政局長ホイットニーの助言を仰ぐべく、表敬訪問をした。
ホイットニーは、
「あなたの最も重要な任務は日本の学生が、政治に立ち入らないようにすることと、目下の事態に安全を齎すことである。共産主義が大きな脅威とは思われぬが、共産党がその目的を促進するため、未熟な学生を道具として使用しようとしていることは事実である。学生の団体は、とかく過激な運動の温床となりやすい。毅然たる態度をもって情勢に対処されることを希望する」
と語った。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。