ジャーナリストの一撃
『シカゴ・デーリー・ニューズ』紙のケイズ・ビーチ特派員は、6月24日付の記事で、
「GHQの首脳陣は、アメリカ国民に日本で何が起こっているのかを知らせたがらない。ここ数週間、私の数度にわたる重要な問い合わせにも、回答を拒否し続けている」
と強い不満をぶちまけた。
「一体どうなっているのか」。
陸軍省は7月9日、マッカーサーに質した。マッカーサーは翌日、
「ビーチの記事には何らの根拠もない。同特派員がこうした記事を書いたのは、事実関係のデータ収集に手間どったため、理由にもならない苛立ちのためと思われる」
と高姿勢で回答した。
しかし、特派員たちの不満は続いた。
戦々恐々する陸軍省
陸軍長官ロイヤルは、日本でのマッカーサーの「全能」を要注意と思っていたので、特派員たちの不満が積もりに積もって、陸軍省自体に対する批判が高まるのを恐れた。
ロイヤルは1948年7月23日、マッカーサー宛に私信を送り、
「我々は、この問題がアメリカ国民の基本的権利に関わるものと考えるので、もし正確な情報を得るために他の手段がなければ、連邦議会の調査に委ねたいと思っている」
と議会まで持ちだして説得に努めた。
難攻不落マッカーサー
同じ日、マッカーサーは、ロイヤルに次の「情報」を送った。
「特派員たちの批判には全く根拠がない。GHQは占領に関して十分な広報活動を行なってきたし、あらゆる公開された資料は報道陣が利用できるよう万全の努力をしている」
マッカーサーは本当のことを言っていない。だがワシントンのロイヤルは、東京のマッカーサーに「効きめのない脅し」をするのが精一杯だった。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。