追放（パージ）

戦犯に活躍の場はない

「好ましからざる日本人」の追放が、いかに広範囲なものであるかが明らかになった。

マッカーサー司令部に指導され、日本政府は公共企業体の職員５５２０人、衆議院選挙（１９４６年４月１０日）の立候補者３３８４人、貴族院議員全員を審査した。

政策立案に携わる者のうち８１４人、国会議員９人、衆議院選挙立候補予定者２５２人は追放され、１９４５年１０月４日の「治安維持法廃止の指令」で引っかかった６２０２人も公職から追放された。政府職員１８万６０００人が配置転換となり、陸海軍人全員が公職から追放された。

選挙はマッカーサー版

パージが行なわれている一方で、マッカーサーは、衆議院議員選挙の実施を１９４６年４月１０日と決めた。

マッカーサーはこの選挙が非常に大切であると言った。

その理由は、

「⑴信頼を失った政治家たちが齎した混乱を払拭する

⑵戦争犯罪行為で手を汚した人物たちを排除する

⑶新しい政治家たちを紹介する

⑷日本国民の政治的思考を評価する

⑸国民に対して責任を取る政府を確立する

⑹法律の制定が国民の意思を反映される場を提供する

⑺長い間抑圧されていた政治思想に発言の機会を与える

⑻連合軍司令部指令の遂行に必要な法律を用意する

⑼天皇の勅語や布告に頼るという非民主的やり方を排除する」ためだ。


総計２７７０人の候補者たちが、衆議院の４６６議席をめぐって争った。２６２４人は新候補であった。

この選挙では、選挙投票者の数が爆発的に膨らんだ。戦前の日本で投票権を持てたのは２５歳以上の男子だけだったが、戦後初の４月１０日選挙では、２０歳以上の男女が投票した。１３５０万人から３７００万人へと増えた。

マッカーサーは、この選挙を新憲法草案についての「国民投票」と呼んだ。新しい衆議院は、マッカーサーが日本政府に起草を命じた憲法草案（自分の草案）を審議する予定である。

選挙の結果は、新人３７７人、再選３９人、旧国会の元議員４８人、それに票数不足によるやり直し選挙で当選した２人となった。

女性も初めて立候補し、候補者７８人のうち３９人が当選した。

選挙のポスター

共産党の躍進

もう１つ注目すべきことは、戦前・戦中と、非合法秘密結社でしかなかった共産党が、１４３人の候補者を立て、５人を国会に送りこんだことだ。

選挙結果はマッカーサーを満足させた。

極東委員会、特にソ連は、選挙が反動保守派の意のままになったものと非難したが、マッカーサーはソ連の遠吠えと無視した。この選挙の２日後、エマーソンも「もし国会が満足すべきものでないなら、マッカーサー元帥は、解散させ、再度選挙を行なうつもりだ、と語った」と国務省内部メモに書いている。