禁煙とファシズム

by 岡崎匡史 May 1st, 2024

From: 岡崎 匡史
研究室より

あなたは、タバコを吸いますか?
喫煙者にとって生きづらい世の中である。

タバコに対する「魔女狩り」ともいえる状況を、「禁煙ファシズム」と呼ぶことがある。

なぜ、ファシズムと禁煙が結びつくのか?
これを紐解くには、ナチス・ドイツの歴史を知らなければならない。

健康は義務

アドルフ・ヒトラー(1889〜1945年)はタバコが大嫌い。
偶然にも、ヨーロッパの三大ファシスト(ヒトラー、ムッソリーニ、フランコ)は、非喫煙者であった。

ナチス・ドイツは、本格的なタバコ撲滅運動を展開し、タバコ疫学の分野で世界最高峰の研究を誇っていた。

ナチス・ドイツ最大の敵が「癌」。医学界及びナチスドイツは、タバコを「民族の脅威」と見なしていた。

なぜなら、タバコは不妊・ガン・心臓発作を引き起こし、国家の資産を枯渇させ国民の健康を損なうからだ。ナチス政権は「健康は義務である」という思想で予防医学を重視した。 

健康大国

ナチス・ドイツの「健康は義務である」という思想は、実直に仕事をこなし、病気をしない、生産性の高い労働者を求めていた。まさに優生学に基づいた「健康大国ナチス」である。

ナチス・ドイツは職場での禁煙を推奨し、小学校ではタバコの害を教えるように指導。役所や病院を禁煙にしただけでなく、その範囲は路面電車や防空壕にも拡大していった。

もちろん、ナチスの残虐行為から目を逸らそうとしているのではない。
しかし、国民の健康にとって、プラスに働いた面もある。

公衆衛生は、全体主義的なものであり、ファシズムの豊かさにも光をあてる必要がある。


ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・ロバート・N・プロクター『健康帝国ナチス』(草思社、2003 年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。