From: 岡崎 匡史
研究室より
あなたは、タバコを吸いますか?
喫煙者にとって生きづらい世の中である。
タバコに対する「魔女狩り」ともいえる状況を、「禁煙ファシズム」と呼ぶことがある。
なぜ、ファシズムと禁煙が結びつくのか?
これを紐解くには、ナチス・ドイツの歴史を知らなければならない。
健康は義務
アドルフ・ヒトラー(1889〜1945年)はタバコが大嫌い。
偶然にも、ヨーロッパの三大ファシスト(ヒトラー、ムッソリーニ、フランコ)は、非喫煙者であった。
ナチス・ドイツは、本格的なタバコ撲滅運動を展開し、タバコ疫学の分野で世界最高峰の研究を誇っていた。
ナチス・ドイツ最大の敵が「癌」。医学界及びナチスドイツは、タバコを「民族の脅威」と見なしていた。
なぜなら、タバコは不妊・ガン・心臓発作を引き起こし、国家の資産を枯渇させ国民の健康を損なうからだ。ナチス政権は「健康は義務である」という思想で予防医学を重視した。
健康大国
ナチス・ドイツの「健康は義務である」という思想は、実直に仕事をこなし、病気をしない、生産性の高い労働者を求めていた。まさに優生学に基づいた「健康大国ナチス」である。
ナチス・ドイツは職場での禁煙を推奨し、小学校ではタバコの害を教えるように指導。役所や病院を禁煙にしただけでなく、その範囲は路面電車や防空壕にも拡大していった。
もちろん、ナチスの残虐行為から目を逸らそうとしているのではない。
しかし、国民の健康にとって、プラスに働いた面もある。
公衆衛生は、全体主義的なものであり、ファシズムの豊かさにも光をあてる必要がある。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・ロバート・N・プロクター『健康帝国ナチス』(草思社、2003 年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。