災害からの教訓
東日本大震災とそれに伴う福島原発事故から9年が経とうとしております。この災害から私たちは、何を学んだのでしょうか。日本はオリンピックに向けて着々と準備を進めていますが、福島原発のことが忘れさられているようにも感じます。
皆さん、日本では近年、たくさんの災害や大事件、大事故が起きていますが、そんな中で私たちが学んできた最も大きなことは、皮肉にも、言い訳に関する言葉でした。漢字で「想定外」と書きます。
「想定外でした」と言ったら何かもっともらしい理由のように聞こえてきて、許されると思っている。「許して下さいよ。こんなこと起きるなんて誰が予想できたのでしょうか。俺の責任じゃないでしょう」というわけです。
責任逃れ
最悪の事態を考えて、それに対してどうすれば被害を最小限に出来るか。それを考えて、行動できるプロが日本には大勢おられます。しかしプロとしてのメンツがあるのでしょうか。「被害は20ぐらいだろう」と見積もっていて、そこに50や100の衝撃が来るわけです。そうすると、「自分たちがドジった」とは言えませんから、「これは想定外の被害だった」と言うのです。
ここで、想定していなかったのは誰でしょう。これくらいで良いだろうと決めたのは誰でしょう。そんな甘い判断は許されるのでしょうか。なんでもかんでも「想定外」と言う。私はその言葉を聞くたびに「このやろう、言い訳をしやがって」と思いますよ。
地震大国
日本列島にある様々な地形をよくご覧になってほしいと思います。あちこちでギザギザの海岸線があります。東北地方の三陸沖にはリアス式海岸があります。私は見たことがないのですが、小学校の時に習いました。教科書に小さな白黒の写真が載っていました。
大人になると、そのような地形には原因があることが理解できるようになります。海による侵食です。大地震が起きた時には大津波が来て、柔らかい土を全部取り除き、時に岩を削り取り、ああいう形になったのです。
日本は世界一の地震大国です。地震に対して建物を強く造る技術も進みました。しかしいつもまた「想定外」が来るわけです。怖いのはもちろん地震ですが、火山の噴火も怖い。鹿児島から北海道まで、私たちの国は火山だらけです。富士山も噴火するのではないかとずっと言われておりますが、実際に噴火したら「想定外」と言うのですか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国土復興と防衛(2020年3月上旬号)-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。