日中関係の深淵

by 西 鋭夫 January 29th, 2024

アヘン

近代日本はいわばアヘン大国でした。満洲でもアヘンを栽培しておりましたし、国内では和歌山、奈良、大阪あたりがアヘンの三大産地でした。日本の歴史を勉強しておりますと、「アヘン」という言葉に出会った事がありません。しかし、歴史的文書や資料にはアヘンのことがしっかりと書かれております。

お隣の中国はアヘンをめぐって戦争をしておりますが、その時のアヘンと日本が満州にもっていったアヘンの意味合いは大きく異なります。当時の大英帝国は中国をアヘン漬けにして、滅ぼそうとしたわけでしょう。日本はそんなことより、アヘン栽培をどんどんと広めていこうとしておりました。日本が誇る一大産業でしたから、満州にアヘンを持ち込んだことについては負い目など感じていなかったはずです。

日本が負い目に感じているのは、日本軍が中国を「侵略」したということでしょう。中国は時々、急に思い出したようにこの「侵略」ワードを持って、日本を責め立てております。

 

日本叩きはいつから始まったのか

私が子どもの頃、日本はとても貧しい国でしたが、中国はそれ以上に貧しい国でした。小学生から中学生となり、高等学校に入ってもまだ中国は貧しかったように思います。そんな時代に、中国から日本の悪口など聞いたこともありません。ましてや戦争犯罪の話など一度も聞いたことがありませんでした。

それが急に変わったのは、中国が豊かになり始めてからです。それ以前は、日本もたくさん援助をしていましたから、文句を言ったらもらえなくなるとでも思ったのでしょう。しかし今や、ことあるごとに日本批判を繰り返しております。

完全に馬鹿にした態度です。「小日本さん、まだここにいるのですか。どこかへ行きなさい」とでもいう感じで、日本に対して完全に下に見ております。日本に対しては恐れも感じていないのです。かたや自分たちは中華帝国という巨大な帝国の頂点にいたと自負しております。そのイメージが、日中関係の根底にあるのです。



ゴールド

その中国が今、世界の「金」を必死に買い集めております。彼らは金が永遠の価値を持つことを、そして戦争があるたびにドルも、ポンドもいつ落ちるかわかりませんから、純金がもの言うということを熟知しているのです。それで世界中の金を買い漁っているわけです。

私はもう長い間、講演などで「金を買われたらどうですか」と言ってきました。お客さんからは「西先生、金は今、とても高いですよ」などと言われます。しかし私は、今の価格の半分の時から言ってきた訳です。金は、待てば待つほど、高くなります。

日本経済はずっと落ちておりますが、それでもなお世界のほとんどの国々と比べたら、裕福ですし、経済的に豊かです。しかし、金の蓄えはほとんどないでしょう。これは国家の経済安全保障において重大なリスクを背負っていることと同じです。国の経済政策としていかに金を集めるか。これは大切な政策課題です。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
国際政治とリーダーシップ(2020年1月下旬号)-8

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。