日本の選択
日本はこの先、どこに向かうのか。中国につくのか、それとも米国との同盟関係を維持したいのか。中国側につくという選択はおそらくないでしょう。中国は日本を属国のように扱いたいと思っているかもしれませんが、日本がそこに入っていくことはあり得ないと思います。
米国も日本を手放さないでしょう。極東の砦ということに変わりはないと思いますが、それ以上に米軍にとってこんなに居心地が良い国はない。お金もジャンジャンと出してもらいながら、日本の土地も、海も、空も使いたい放題です。以前お話ししましたが、横田基地上空は日本の飛行機が飛べないのですよ。随分とおかしな話だと思います。
そんな状況ですから、日本が米国から離れて、中国側につくことは想像できません。しかしながら、ぐんぐんと成長していく中国と、日本は今後どう付き合っていくのか。政治家の先生はもとより、私たち一人一人も真剣に考えないといけない時が来ています。
政治的リーダーシップ
この点、トランプ政権の米国は明確です。彼は大手企業が中国に行くことを心の底から嫌っておりまして「税制を有利にしてやるから、戻ってこい」と言っております。それで大幅な減税を実現しましたから、米国企業は大喜びでアメリカに帰ってきました。トランプさんにとっては、アメリカの会社が中国で作ったものを、アメリカに逆輸入するなんて「ふざけるな」の世界なのです。
それと同じくらい日本も思い切ったことをやって良い。「日本企業よ、戻ってきなさい。税制を緩くしますから、日本でたくさん儲けてください」と。それが国を守る、すなわち国民の生活と経済を守る政策でしょう。政治家の先生は何を血迷ったか、中国に媚びてばかりなのです。日本の国益を中国から本気で守ろうとする政治家はいらっしゃいますか。
日本企業を日本に戻すことの意義は大きいですよ。日本では「過疎化」「高齢化」「少子化」といって、問題ばかり指摘していますが、日本の地方にどんどんと工場や拠点を作り、雇用を拡大したらどうでしょう。働きたくてうずうずしているおじいちゃん、おばあちゃん、そしてお母さん方がたくさんいます。
人口が減って人手がないことを嘆くのであれば、一人一人にもっともっとお金をあげなさい。購買力を復活させるのです。経済的な豊かさが生活のゆとりを生むのです。それが子を産みたいという気持ちを支えるのです。
ニクソン・ショック
日本では海外の方が労働力が安く、製品を効率的に生産できると信じられています。それは今や大いなる幻想なのですが、日本企業はそこから抜け出すがことができません。
中国に限っていえば、日本企業は1970年代以降、中国にどっぷりと浸かってしまいました。貧しい中国を解放させ、援助して、今のような中国にしたのは米国と日本です。始まりはニクソンとキッシンジャーでしたね。皆さん、どうかお忘れなく。
当時の日本はどんどんと豊かになっていきましたから、お金もたくさんありました。一方の中国は非常に貧しかった。米国抜きで中国との関係を深めようとした大物政治家はスキャンダルで排除され、その後に出てきた若手、中堅政治家たちが米国参りをしながら中国を助けてきました。その結果、今の巨大な中国が誕生したのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国際政治とリーダーシップ(2020年1月下旬号)-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。