イラン対米国
イランと米国は一戦を交えることになるのか。私は、そうならないと考えます。イランの文明・文化は偉大です。時代を遡るとペルシャ大王朝の素晴らしさが分かるでしょう。あの帝国を築いた民族は間違いなく賢いし、相当強い。そう思います。
しかし現在に至っては、とりわけ米軍と対峙できるだけの十分な軍と武器を持っておりません。米国が持っている武器の1000分の1あるいは、1万分の1も持っていないと思います。
さらにイランの国民は経済封鎖されて、もう長い年月が経っておりますから疲れております。本音では、早く経済封鎖を解かれて、米国ともドンドンと貿易を行って裕福になりたい、そう考えているのではないかと思います。あそこには石油もあります。
国内では何が起きているのか
ところが皆さん、そう思っているイランの国民と、イスラムの厳格な法学者たちとの考えは別のようです。この議論は非常に難しく、繊細な部分を含みますので、慎重に考えていかなければなりません。
米国で見聞きしたことを話しますと、この間、アメリカのミサイルがテロリストの拠点を破壊し、数名を殺害した際、イランのあちこちで、日本でいうバンザイが起きたというニュースを見ました。日本では報道されておりませんが、アメリカではそのニュースがあったのです。
先日は、テヘランでいわゆるデモのようなことが行われている映像を見ました。人々が法学者らに対して、「早くどこかへ行け。俺たちはもっと自由になりたい、もっと裕福になりたい」と言っておりました。日本とイランとの間には友好、親善関係があります。しかし、日本の報道だけを見ていてはダメです。日本人はフェイク・ニュースに騙されております。
洗脳
他方で、米国のやり方もえげつない。言い方を変えれば、徹底的に準備をして、いろいろな方面からイラン潰しを行なっております。具体的には、イランを国内から分断させるために若者たちを洗脳しております。同時に、国を牛耳るイスラムの法学者たちを攻撃しております。
イラン革命が起こった時、イランから亡命してきた難民たちがいますね。あの人たちが米国に来て、ここで育っていくわけです。お父さん、お母さんも、もちろんその子供たちもイスラム教徒です。アメリカの英語を普通に話し、イランにいる友達と携帯で連絡するのだそうです。
その中である子が言っていましたよ。「世界中で報道されていませんけれど、イランの若者は早く自由になって世界中に出ていって、ファッションもアメリカのようにやりたい。ジーパンを履きたい。女の子は口紅を塗りたい」。私たちが知らないイランで、おそらくその内部において、相当な分裂、亀裂が起きていると思われます。
西鋭夫のフーヴァーレポート
国際政治とリーダーシップ(2020年1月下旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。