軍事研究なき日本
日本ではなぜ「軍事研究」や「軍事学」といった分野が育っていないのでしょう。日本には現在、800近い大学がありますが、そんな名前のついた科目はほとんど見たことがありません。大学の外に目を向ければ、いくつかの限られた研究機関やシンクタンクなどにはあるのかもしれませんが、それもごく少数でしょう。
なぜこのような状況になったのか。教養としてもあって良いと思いますし、平和についてとことん考えるのであれば、軍事に関する学問もじっくりと取り組むべきでしょう。世界全体の学術的状況から眺めてみますと、日本の今の状況、とりわけ戦争と平和に関わる学問体系には、明らかな偏りがあると思わざるを得ません。
その背景には、戦後75年以上続く「平和教育」の影響があるのだと思います。「軍事」と聞いただけで拒否反応を示す人も少なくありません。軍事に関する研究は、いくら学術的に高い水準にあろうと、まともな評価を受けておりません。助成金の選考過程でも真っ先に落とされるでしょう。平和のことは良いけど、「軍事研究はダメ」、といういかにもおかしな状況が続いているのです。
以前もお話ししましたが、これは日本国の形を決めたGHQによる占領政策と憲法制定に関わってくる問題です。現在、安倍総理が一生懸命になって九条を書き換えようと努力されていますけれど、問題は実は九条ではないのです。憲法そのものなのです。
問題は九条のみにあらず
ですから、総理がもし「国民の皆さま、新しい憲法草案を作ってください」「私たちの手で新たな憲法と作りましょう」と言ったら、日本政治史上、極めて重要な問題提起になると思います。多くの皆さんが眠りから覚めたように、憲法について勉強し始めたり、関心を持ち始めたりするのではないでしょうか。改憲派、反対派を問わず、憲法論議が始まります。
憲法改正の過程はまた、1、2年で行うのではなく、5年、10年計画で時間をかけましょう。これからの日本のあり方を検討し、将来の日本に本当に合う、そんな憲法を作るのです。
そんな話ができる政治家の先生はいませんか。現状は兎にも角にも「九条」の話しか聞こえてきません。もう皆さん、飽きてしまい、お疲れでしょう。そもそも九条だけを変えてどうするのですか。そうすると日本が軍隊を持てるようになるのですか。九条を変えた時に、ワーと誰かが攻撃するかもしれませんよ。日本がこれから軍事的に強くなっていくことを恐れて、今のうちに叩こうとするかもしれません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
第三次世界大戦の予兆(2019年6月上旬号)-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。