大麻ビジネス
「大麻」と聞いて、皆さんは好意的なイメージを持ちますか、それとも危険だと感じますか。フーヴァーレポートでは過去に「医療大麻」や「大統領選挙と大麻解禁」といったテーマのもと、既存のメディアでは報道されない「大麻」をめぐる国際政治について論じてきましたが、今回はその第3弾として「大麻ビジネス」の最前線についてお話しします。
2016年11月、世界が注目したアメリカ大統領選の同日、実はとても重要な住民投票が行われておりました。場所はカリフォルニア州です。それは大麻の合法化をめぐる住民投票でした。結果は可決。56対43でした。
カリフォルニアにてマリファナが全面的に解禁となったのです。今後はいわゆる嗜好品として売られます。成人に達していれば、ビールを買う感覚でマリファナが買えるようになったのです。
沈黙する日本
これがどれほどのニュースが、日本では全く知られておりません。逆に、大麻に対してはかなり否定的なイメージで語られております。「悪い」ものだと決められてしまっているのです。
昨日のニュースでは、有名な歌手とその内縁の奥さんが大麻をやっていたということで捕えられたようです。鬼の首でも取ったかのように、マスコミも警察の方も大喜びしております。私は正直なところ、その2人を見て複雑な気持ちでした。国の違いももちろんありますし、大麻については良い面と悪い面、両方あると思います。しかし日本人の大麻に対する発言を見ていると、一つの面からしか捉えていないように思うのです。このやり方には大きな違和感を感じます。
一方のアメリカでは大麻を麻薬とは思っておりませんし、タバコを吸っていると皆さんから非難されますが、マリファナというと皆さんニコッとしております。しかし、もちろん、反対の声もあるわけです。だからこそ、皆さんで色々な意見を持ち寄って決めましょう、ということで住民投票が行われたわけです。日本ではそんなふうにはならず、一方的に監獄行きです。
大麻犯罪歴の消去
日本では芸能人らによる大麻使用が後を絶ちません。彼らは手錠をかけられ牢獄へと向かいます。かたやカリフォルニアでは2018年1月、過去40年間の大麻犯罪歴を消去する方針が打ち出されました。極めて画期的なことだと思います。
科学的事実をもとに考え、「ああ、大きな間違いを犯したのだ」と自分たちの非を認めたのです。マリファナを吸っただけで監獄に送られていたのです。18歳でマリファナを吸っていてもそうです。これがどれほど残酷な刑法であったか。40年前に捕まった人たちもその犯罪歴をリセットされました。もう「なし」にしますという決定は、勇気のいる決定です。
そんなことが世界で、またはアメリカで起きている時に、昨今の日本の大麻に対する反応は異常ではないでしょうか。大麻に関わる問題について、日本はきっちりと対応しているようで、実は一方の面しか語っておらず、議論や対話がほとんどないのが現状です。一つの面だけを見て、それが「正しい」と信じ込まされているのです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
大麻ビジネス(2019年5月下旬号)-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。