努力が出来ない子どもたち

by 西 鋭夫 June 22nd, 2023

苦労の大切さ

現代の子どもたちに今、一番何が足りていないのか。フーヴァー研究所ピーター・ロビンソン教授によるベン・サス上院議員へのインタビュー記事「永遠の思春期から抜け出す」は、「苦労」であると指摘しています。その通りだと思います。

私の経験上、幼いときの「苦労」は人格形成にとってとても重要です。それは徹底的なものです。今の日本では、高齢者が増えていることが問題だと言われておりますが、本来は「問題」としてではなく、「感謝」の対象として大切にすべき存在です。彼らの世代による膨大な「苦労」があり、今の私たちの暮らしがあるからです。

戦前・戦後を通して、今の高齢者たちの9割以上は飢えの中でなんとか生き抜いてきました。働き口があれば、選ぶなんて悠長なことは言っていられません。仕事があるだけも「自分たちは恵まれている」と思いながら働いたのです。

 

氷の運搬

戦後間もなくの頃、私の兄は7歳上でしたけれど非常に優秀な男で、高等学校からアルバイトをしていました。最初のアルバイトは氷屋さんです。昔は氷を家に運んでいたのです。1日働いて100円の仕事でした。1時間ではないですよ、1日100円です。真夏に汗をダラダラ垂らしながら氷を運んでおりました。この積み重ねの中で、日本がどんどんと、そして着実に豊かになってきたのです。

しかし、この苦労を知らない若者たちは、自分で苦労することもなく、この豊かさを当たり前のように享受しながら、文句を言っているのです。そんな文句が平然と罷り通ってしまった結果、私たちの社会は今、悪平等とでも呼べる社会になってしまいました。文句を言うことが、自由や平等だと勘違いしているのです。

 

勝つための努力

私たちはオリンピックが大好きです。ところが小・中校で皆んな「同じ」、皆んな「平等」をずっと詰め込んでいるのですよ。差別や不平等があってはいけない、ということで、手をつないで「よーい、ドン」をする世界です。おかしいでしょう。その上、食べ物にも全く困っていませんから、ふやふやした軟弱な子どもたちが大量に作られているわけです。

日本では二言目には「かわいそう」「弱者を守ろう」と言います。かわいそうな弱者を助けるためには「強いやつ」が必要です。しかし、その強いやつが日本にはいなくなってしまった。親たちの思考や発想も軟弱です。例えば「数学はちょっとできるけど、足が遅くてかわいそう」などと考えるのです。皆さん、その子は本当にかわいそうなのですか。私の世代はかわいそうと言われたことはないのですよ。「もっとやらんかい、コラ」でした。

学校でも怒りませんし、家庭でも怒りません。厳しく導くということをやらないのです。教育や人権について誤解しているのでしょう。それが今の日本なのです。怖い教師も、怖い大人もいなくなった。では、誰が子どもたちを守るのか。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年4月上旬号「愛国心と教育」-4

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。