世界経済の行方
アメリカと中国、どちらが世界をリードするのか。経済の中心はアメリカやヨーロッパから中国を中心としたアジアに移るのだろうか。そんな質問をよく受けます。
しかしながら、経済の中心は昔のように一極化することはありません。情報技術やAIが発達したため、お金をいちいちニューヨークやロンドン、北京などに集める必要もなければ、置いておく必要もなくなったからです。決済のスピードも全く違います。
中国経済がアメリカ経済を凌ぐのではないか、といった質問も受けますが、それもないと私は思います。理由は経済ではなく政治にあります。中国国内の政治問題です。中国は共産主義政権によるいわば独裁国家ですから、いかに中国の経済が良くなっても、その富のほとんどは共産党員の中で分配されております。そのお金が国民へとジャンジャンと流れ出したら、次に人々が求めるのは自由でしょう。それを知らない中国共産党ではありません。ですから、お金の流れを抑え、自由を与えないようにしているわけです。
国内政治の脆弱性
中国政治の硬直性、さらには国内における様々な政治的、経済的組織の弱さは中国自身にとってやがて大きな問題に発展するでしょう。これらは全て、経済自体にかかわる問題ではなく、政治体制にかかわるものです。
トランプ大統領がなぜ北朝鮮にドーッと近づいたのか。それは、北朝鮮を中国から切り離すことによって、鉄砲玉として使えないようにしたのです。トランプ大統領の訪朝により、北朝鮮はもはや中国の子分ではなくなりました。
金総書記とトランプ大統領との間に独自のパイプができたわけです。北朝鮮は今、祝杯をあげている頃でしょう。トランプ政権と仲良しになり、将来的には経済援助もしてもらうことで、中国と適度な距離をとる。そんなことを考えているのだと思います。
民主化はあり得るのか
中国が民主化するという希望的観測についてもよく聞きますが、それもあり得ないでしょう。建国から70年間、その動きは全くありません。私から見ると、中国共産党はエスカレートして弱い人たちをどんどんといじめております。中国にも政治的な天才はごろごろおりますが、その人たちが発言をすると、それが共産党の思いに合わなかったら、彼らは幽閉されるわけです。監獄に入れられるか、国外追放となるか、下手をすれば殺されます。そういう社会が続いているのです。
一度権力を握ってしまうと人々はその地位を維持しようとしますから、変革することはなおさら難しいと言えます。中国にとっての民主化は、共産党員たちが自身の権力を手放すことと同じ意味です。それを世界平和のためにと喜んで行う共産党員はいないでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年10月上旬号「米中衝突と日本」-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。