日本帝国主義のレガシー

by 西 鋭夫 August 22nd, 2022

日本式植民地支配

もし私が「日本の植民地時代に何か良いことをした」などと話をしたら、殴られるか、刺されるかしていたでしょう。地下鉄で後ろから誰かに押されていたかもしれません。台湾や韓国の方々が「日本の植民地政策は良かった」と指摘するのは問題にならない。でも占領した側がそれを言うのはお門違いです。

しかし歴史には嘘と本当があります。私が言うと問題になりますから、他の研究者が言った話を紹介しましょう。

私のお友達がフーヴァー研究所におられます。1人は朝鮮半島専門家で、もう1人は中国政治を、それこそ共産党の時代以前から研究している専門家です。この人たちとお昼ご飯を一緒に食べている時の話です。やりとりをそのまま再現します。

朝鮮半島について

「鋭夫、日本は謝ってばかりではダメだろう」
西:「もうそろそろ時効だと思いますが」

「時効の問題ではなく、朝鮮半島は実際のところ日本の植民地になったことでどれだけ助けられたか。日本がインフラを作り、教育機構を作ったのではないか。官僚システムの成立にも大きな役割を果たしたではないか。時効云々ではなく、それが事実ではないか」
「今でも朝鮮半島で日本が作ったインフラは実際に活用されているでしょう。それをちゃんと言ってやれ」
西:「そんなことを言ったら殺されますよ」

「朝鮮でも台湾でも、日本の技術者がどれだけ尊敬されているか。日本人はわかっていない」

 

中国との関係について

「中国と日本は、本当はもっと仲が良くていいのではないか。お互いの文明文化の底辺がつながっている。日本が中国で、例えば満州でどれだけのインフラを作ったか、教えてあげたらどうだ。お前も南満州鉄道を知っているだろう」

西:「知っています」

「お前は、もっとその話をしてやれ」

 

満鉄

現在のハルビンから遼東半島の大連まで走っていた鉄道を「満鉄」と呼びます。そこを走っていた蒸気機関車が「あじあ」です。

「あじあ」は、いわば現在の新幹線のお祖父ちゃん・お祖母ちゃんにあたります。これが非常に大きい機関車で、ものすごい馬力でした。列車もとても美しく造られておりました。当時で、世界1、2位のスピードで原野を走っておりました。春夏秋冬どの季節でも原野を走るわけです。素晴らしい機関車でした。

食堂車がこれまた綺麗で、食べ物は超一流。給仕をするお姉ちゃんたちは白系ロシアの超美人が揃っておりました。この人たちは日本語、英語、ロシア語、ほかにドイツ語も話せたようです。世界中の富豪やお金持ちがわざわざ満州まで乗りに来たようです。

私の尻を叩いて「言ってやれ」と催促した大先生のことを思い出します。私たちは70年もの間、何も言わずに、ただ下を向いてお金だけ出している状況です。これが続くと、私たちのプライドまでおかしくなってしまうでしょう。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
大東亜戦争(2018年8月下旬号)-4

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。