弱腰外交
南シナ海の南沙諸島をめぐり、中国をはじめとして関係各国が争っております。中国は同海域の一部を埋め立て、七つの人口島を作り、そこに3,000メートルほどの滑走路を持つ飛行場を作っております。
周辺国とアメリカは危機感を募らせていますが、その原因の一端はオバマ政権による弱腰外交にあると言えます。中国は、南シナ海でやりたい放題動いていても、「米国は何もしない、何もできない」と知っている。
この構図が尖閣諸島にも当てはまります。アメリカ帝国の衰退が招いた惨劇です。極東において中国とのバランスを図ってきた米軍が、潮がひくように撤退し始めようとしている。
沖縄米軍
この8年間、私はアメリカ国民の皆さんと同様に、オバマ政権に期待しておりました。ところが的外れで、オバマ大統領はノーベル平和賞をもらいましたが、結局何もしなかった。それどころか、米国は世界各国・地域で大きな問題を抱えるようになった。
一つは沖縄です。少女虐待・虐殺の問題で、沖縄はもう耐えられない。アメリカもおそらく限界でしょう。これだけ反対されたら、本音ではグアムまで引き揚げたいくらいではないでしょうか。本当にそんなことが起きたら、中国は「とうとう俺たちが勝った」と祝杯を上げるでしょう。
永田町では先生方が号泣です。現政権は、力の均衡が平和の均衡であることを分かっていない。戦争をしなくても良い状態は、強い国がいるからです。お山の大将がいたから、昔の小学校ではいじめがなかった。今は、平等を絶対視するから、みんなでいじめあっている。
アナーキー
もう一つは中東地域からの米軍の撤退です。イラクからも、アフガンからも、米国は撤退した。その結果、これらの地域には力の空白が作り出された。そこにイスラム過激派やISのような集団が台頭してきた。
この状況は第一次世界大戦が終結した1918年に似ています。アメリカがヨーロッパから一斉に引き揚げ、国際連盟に加盟しないと決めた時、ヨーロッパは見捨てられズタズタになった。力の抑止力が働かないことを知った世界で、清国は崩壊し、そこに日本軍がワッと入ってきた。時代も役者も変わりましたが、シナリオはいつも同じです。
米国がアジアから撤退しようとする今、日本は尖閣諸島に対して何もできないのか。米国に助けを求めても期待はできないとすれば、自分たちで動くことも必要なのではないか。例えば、自衛隊の優れたパイロットたちに編隊を組んで訓練を行ってもらう、それを世界に向けて発信する。それだけでも、日本の強さを示すことができるのではないか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年6月下旬号「尖閣諸島の情勢」-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。