From: 岡崎 匡史
研究室より
なぜ、文明は崩壊するのか?
かつて、「文明と水」というエッセイを寄せたことがあります。
エーゲ海は、なぜ透き通るほど青いのか?
それは、魚を養う栄養分が陸地の森から供給されていないからです。
森に資源を依存したギリシア文明は、都市化が進み技術が進歩するほど、燃料不足に陥っていく。燃料を確保するため森林を切り開く。人間が自然を支配し、根こそぎ破壊しつくことで、文明は滅亡の道へと転がり落ちていった。
今日は、この続きを書きたいと思います。
土壌浸食
文明崩壊の原因は、気候変動や温暖化ではありません。
「土壌浸食」が大きな原因です。いったい、どういうことか?
人口が増えていくにつれ、生活圏を確保するため樹木や植物は切り払われていく。まして、石油がなかった時代は、木材が燃料として不可欠。さらに、家を建てるため建築木材として森林は伐採される。むき出しの土壌が雨や流水に晒されると、土壌が劣化していく。
土地の土壌劣化がはじまると、農業生産力は減少。新しい土地を求め、国土を拡大していけども、いずれ限界を迎える。新たな土地を手に入れることができなければ、人々の生活はますます苦しくなってしまう。人間の定住が維持できないと、土地を手放し、人々は離散していってしまう。
土壌を維持することは、文明文化を生み出すことに繫がるのです。
畑とミミズ
「土」は、私たちの身近な天然資源。土壌の状態によって、作物の繁栄が決まる。
進化論で有名なチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin・1809〜1882)は、ミミズの研究に晩年打ち込んだ。なぜなら、ダーウィンは畑を耕しているのはミミズと考えていたからだ。土壌の消化能力とミミズに何らかの関係があるはずだと、、、
日本でも、昔からミミズのたくさん生息する畑は、肥沃であると考えられていた。石油に依存する化学肥料、農薬や除草剤を使いすぎると、ミミズも死んでしまう。畑が劣化してしまうのだ。
健康な土壌は、健康な植物を育てる。畑仕事をした人なら誰でも知っている基本的なことが忘れ去られている。肥沃な土地は、財産。家庭農園が贅沢になる時代が近い将来にやってくるかもしれない。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・デイビット・モントゴメリー『土の文明史』(築地書館、2010年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。