「計画停電」とは何だったのか

by 西 鋭夫 May 5th, 2021

原発事故の風化


アメリカをはじめ世界各国の目は、フクシマでの原発事故とその後の復興に大きな関心を寄せています。しかし日本では、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という言葉があるように、すでに風化している。さらに、いつの間にか電気料金も上がっています。

原子力発電が日本にとっていかに重要か。3.11後、政府は国をあげての大宣伝を行いました。これが「計画停電」の正体です。「原子力が止まってしまっているから、節電が必要です」と訴えました。日本人は真面目な人たちです。政府の説明に従い、一生懸命に節電しました。停電する時間も決められておりましたので、それに備えて準備もしっかり行い、計画停電に対応してきました。


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ところが、2012年以降からこれまで、灼熱の夏でも、凍えるような冬でも、ガンガンに冷暖房を使っておりましたが停電になっていません。50基ほどの原発の全てが止まっていても、電気は使い放題でした。


電気代の高騰


問題はさらに深刻です。日本人が大真面目に節電した結果、今度は大手電力会社の収入が減りました。原発を有する電力会社は政府に助けてもらいながらも、事故対応と事故対策に莫大な費用をかけております。そんな中での収入減はかなりの打撃だったのでしょう。そこで、電力料金を上げた。

どれだけ日本国民を馬鹿にしているのか。私は激怒しております。私は、電気を使うのが大好きです。朝から晩まで色々なことに使っています。なので、なおさら腹立たしい。


平気で嘘をつく組織


今の日本政府の状況は、強いて言えば、戦時中の大本営と同じです。大本営は嘘をつくとこで有名でした。日本人は、政府や大手会社が嘘をつくとは思っておりません。日本人は、真面目に税金を払い、働き、そしてお金を貯めることをずっとしてきた国民です。

日本人の素晴らしい国民性が見事に裏切られ、金を巻き上げられている。今、起きていることはこのような構図です。日本政府も、大手電力会社も、この構造に気づかれないようにと原子力の偉大さを植え付け、そして都合の良い情報だけを流してきました。

アメリカのメディアでもほとんど取り上げられておりません。4〜5年も経った福島はどうなっているのか。取材もさせていないし、メディアにも情報を流していません、と答えたら、皆さんジョークだと思って大笑いでしょう。本気だと分かれば、政府も大企業も袋叩きにあうでしょう。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 4




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。