見えない脅威

by 西 鋭夫 May 3rd, 2021

放射能汚染


広島、長崎への原爆投下は一瞬にして多くの尊い命を奪いました。しかしそれだけではありません。被爆者たちは、それ以降もずっと放射能で苦しんでおります。いまだに後遺症で苦しんでいる人がいます。

福島原発事故によってどれだけの放射能が拡散されたのか。特に子供たちや若い女性たちの健康被害が心配されております。今のところは、被爆が直接の原因となって人が亡くなる、ということは起きていないように思われます。もちろん心労などが重なるなど、様々な要因で亡くなってしまった人はおります。しかし、放射能と健康被害の因果関係を科学的に立証することは難しい。

そんな中で、私たちは放射能の問題とどう向き合っていけばよいのでしょうか。政府は「直接的な被害はない」や、「今現在は危なくない」などと言っています。


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レントゲン


どこまでが本当なのか。私には詳しいことは分かりません。しかし、感覚的、経験的に「危ない」と思っています。

例えば歯医者さんに行くと、歯の様子を確認するためにレントゲンを撮ります。レントゲン技師は、私たちに鉛で出来たジャケットかけます。すなわち内臓を守っているわけです。技師に「安全ですか」と尋ねると、「安全です」との返答です。でも、そう答えた技師は、レントゲンを撮るときは同じ部屋にはいないのですよね。

小中高での身体測定においても、毎年レントゲンで肺の様子を撮っております。一瞬ですが、あれも肺が映るほどの放射線を当てているわけです。知人の医者は「これは本当に必要なのか。むしろ害になるのではないか」と話しておりました。安全であれば、妊婦さんにだって当てられて良いはずです。しかし、妊婦さんに対してレントゲンは厳禁です。どのように作用するか分からないからでしょう。


チェルノブイリ


一瞬であっても問題視される放射能が、福島の一部の地域ではずっと高い数値のままです。帰還できるはずもない。それだけ高い量の放射線が事故当時から拡散しているとすれば、多くの人たちが被爆していると言えるでしょう。

1986年のチェルノブイリ事故後では、その周辺地域にいた多くの子供たちが甲状腺癌になりました。1人、2人ではなく、それこそ何十人、何百人の話です。日本の医師団も応援に行き、甲状腺の手術を行いました。原発の近くにあったベラルーシのゴメリでは、小さな子どもたちの多くに甲状腺癌が発症しており、事故と甲状腺癌には科学的な因果関係があると言われています。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 3




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。