対テロ戦争の行方
アメリカやフランス、EU諸国の経済規模や軍事力からすると、イスラム国の勢力は数の上では取るに足りない存在です。しかし、イスラム国は「テロ攻撃」という手段をとっているので、対策がなかなか追いつかない。軍事力のある国でも損害を被っている状況です。
今のところフランスはISISの拠点に対する空爆を続けていますが、本当にイスラム国を殲滅するのなら、地上軍を投入しなければなりません。これをきっかけとして、第3次世界大戦が勃発するというシナリオも、おそらく今のアメリカでは想定していると思います。軟弱のオバマ大統領に相談しても何もはじまりませんから、国防総省(ペンタゴン)は独自に作戦計画を立てていることでしょう。
アメリカでは来年(2016年)に大統領選がありますが、ヨーロッパで極右政党が幅を利かせているように、アメリカでも右寄りの人物が大統領になっていくと思います。パリの恐ろしい事件を見ながら、米国民は「次は我が身」と構えています。
欧米諸国 vs. ISIS
第一次大戦、第二次大戦の戦場はヨーロッパでしたが、新たな戦争が始まるとすれば、それはヨーロッパと中東全域が舞台になるのではないか。
米仏共同軍が中東への進軍を開始して、ISISを打倒できずに失敗する。欧州の雄、ドイツがこれを黙って見ているとは考えられません。ドイツが参戦すると、今度はドイツ国内にいる数百万人の移民・難民らが暴動を起こします。ロシアは手を汚さず、アサド政権の後ろに立ちながら、その手綱を弱めたり強めたりするでしょう。
ISISは相手が巨大で、数が多ければ多いほど戦闘意識を高揚させるでしょうから、さらなるテロ攻撃を繰り返すでしょう。テロリストと一般人の顔を識別することは困難です。ですから、国の軍隊は民間人を上手く守ることが出来ない。ヨーロッパ及び中東全域では人間不信が高まり、社会が不安定化していきます。
かつて中東には、社会の混沌を力とカリスマ性で抑え込むことのできる独裁者がおりました。しかし、彼らのほとんどは「アラブの春」によって一掃されました。
日本の参戦はあり得るのか
ISISとの戦いは簡単には終わらない。そのため、米国の次期大統領は日本に対し、集団的自衛権の行使を求めるでしょう。TPP交渉の裏側で必死になってまとめあげた安保法制が役に立ちます。
日本は未だに米国の占領下にあるようなものです。ゆえに日本は、米国の要請を撥ね退けことはできないでしょう。自衛隊はヨーロッパと中東に送られます。米仏軍と共同して戦い、戦死者が東京に帰ってくる日が来るのではないか。
そのとき、日本の総理はどんな言葉を語るのでしょうか。日本の大先生たちはそこまで考えているのでしょうか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年11月下旬号「パリ同時多発テロ」− 7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。