サンダース候補
ヒラリー氏の対抗馬となったサンダース氏にも注目してみましょう。彼は、ユダヤ系ポーランド人移民の子としてニューヨークで生まれ、名門シカゴ大学を卒業しました。その後イスラエルに渡り、集合的な農業共同体である「キブツ」で生活しました。
キブツは、いわば一つの集団的な生活部隊のようなもので、軍事訓練もあります。私は大学院時代からアメリカにいますが、当時の仲間たちのうちでも特にユダヤ系の友人らは、夏になるとほとんどがキブツで生活していました。ある人は、キブツを「共産主義者による危険な集まり」などと言いますが、内実は全く異なっていたと思います。彼らは明るく、ヒッピーの影響も受けていたかもしれませんが、ユートピア的な発想を好んでいたのを覚えています。
サンダース氏は、今(2016年2月現在)74歳ですが、キブツでの経験などから、多くの社会主義的な政策を打ち出してきました。
ユダヤ系大統領はあり得るのか?
ユダヤ系市民の人口は米国全体からすると2%以下です。しかし、彼らは非常に大きな発言力を持っている。政治的にも、経済的にも決して無視できない存在です。ところがユダヤ人は長い間、差別を受けてきました。では、アメリカ社会はユダヤ人大統領の誕生を受け入れることができるのか。
適任者がいればですが、ユダヤ人大統領が誕生する可能性は高い。とりわけ、ウォール街のお金持ちはほとんどがユダヤ系です。彼らは、金融とマスコミの世界を支配していると言って良いでしょう。政治信条は、リベラルで民主党寄りです。
しかし、サンダースが大統領になるとすれば、それは「ユダヤ系」だからではなく、別な理由があるはずです。大統領選において、ユダヤ系か否かが問題になることはないと考えて良いでしょう。
宗教的マイノリティーは?
では、宗教的マイノリティーはどうでしょう。例えば、米国はプロテスタントの国ですが、カトリック教徒が大統領になれるのか、という疑問が時々出てくるわけです。
比較的新しい例では、ジョン・F・ケネディ大統領が挙げられるでしょう。彼はカトリック教徒でした。米国でカトリックは「カルト集団」のように思われているので、「カトリック教徒が大統領になったら大変だ」と指摘されることが多い。
しかしケネディ大統領は別格でした。カリスマ性と演説の上手さに加え、あの明るさが人々を惹きつけました。カトリック教徒の大統領に米国民は惚れました。つまり、彼の場合、宗教的信念は大統領職にほとんど影響を与えなかったのです。
ではオバマ大統領はどうだったでしょう。彼はひそかに、「イスラム教徒なんじゃないか」と言われています。真相は分かりませんが、彼の中東諸国に対する弱腰外交の裏には何かあるはずだと考えています。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年2月上旬号「大統領選挙と人種差別」−4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。