インド発の国産車

by 西 鋭夫 September 21st, 2020

30万円の新車


自動車業界の世界的な再編はすでに始まっています。

たとえばインドです。インドの広大な土地には多くの汽車が走っていますが、絶えず満員御礼です。そんなインドが、今まさに車社会に移行しつつあるのです。そこには非常に大きく、魅力的な市場がある。

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しかし、インドでトヨタやGMなどが売れるわけがない。数百万円の車なぞ、インド国民は欲していない。

インドの財閥「タタ」はそこに目をつけました。そして、日本円にして30万円ほどで買える車を作りました。冷暖房なし、手で巻いてドアの開閉をする車です。最低限度の装備だけで、あとは安全性を追求しました。


ベンチャー企業の参入


この流れはおそらく中国にも広まるでしょう。自動車先進国から輸入するなど、時代遅れとなる日も近いのではないか。昔からあるメーカーも、ブランドだけでは生き残ることが難しい時代になります。

ベンチャー企業も、自動車市場に次々と参入するでしょう。彼らはできるだけ部品の少ない、工程も短い車を製造し、それを低価格で売り始める。故障したら、修理するのではなく、交換する。そういう世界になってくると思います。

私たちが知っている従来の自動車製造のあり方とは全く異なる時代の到来です。


車より、スマホを選ぶ若者


車が所有者のステータスを表す時代も終わりました。昔は、車はある種のステータスだったわけです。しかし、今のご時世、自動車をステータスだと考える人は、ほんの一握りのお金持ちだけでしょう。

日本の若者は、トヨタの車よりもスマートフォンに夢中です。美しいお姉さんの前で、どれだけチャカチャカと使いこなすことができるか。それが今の若者にとって重要です。一方のお姉さんも、車の有無でその人を判断することはありません。自動車に憧れた世代とそうではない世代とでは、それほどの違いがあるのです。

つまるところ、大手自動車メーカーは、新規参入者たちからの突き上げだけでなく、一般市民の「車離れ」にも対応せざるを得なくなったわけです。


変わらないアメリカ


それでもなおアメリカは変わりません。今でも乗っている車で人を判断します。それは、車による「人種差別」「経済差別」「インテリ差別」とでも言える世界です。アメリカ生活が50年に及ぶ私は、それを肌感覚で感じています。

高級車で、環境にも優しいプリウスはもとより、ベンツやアウディー、BMWなどもまだまだ需要があります。その一方で、装飾品ゼロの限りなく安い、ただ頑丈な車が、新たな市場を開拓しています。自動車業界再編の動きは、これからがまさに本番です。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年10月上旬号「フォルクスワーゲン」− 8




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。