新たな時代へ
自動車に関しては、「燃費の良し悪し」や「環境への影響」などが延々と議論されていますが、より大きな歴史的観点からの議論が欠けております。
世界史全体から眺めてみると、私たちが今、目撃しているのは「石油に頼る時代の終焉」です。これに伴い、地中・海中に眠る燃料を掘り出し、吸い上げる産業も終わりを迎えるでしょう。穴を開けて、資源を搾り取る世界とはお別れです。
今後は電気が主流となります。
テスラ社
スタンフォード大学の真ん前に「テスラ」という会社があります。私の家のご近所さんです。ショーウィンドウがありますが、見ただけでもう釘付けです。美しい車たちが並んでいる。すべて電気自動車です。性能も良い。ガソリンで走る車よりも速い。エンジンを入れて、すぐに走り出します。
唯一の問題は値段です。テスラの車は日本円で1,500万円。買った人は借金地獄で苦しむでしょう。ベンツの上級車メルセデスベンツSでも1,500万から1,600万円クラスですから、お金持ちの人々が馬力重視でベンツを買うか、環境重視でテスラを買うかの世界です。
アップル社員の大移動
天下のアップルも、テスラの前にはひれ伏します。すでにアップルの社員がテスラ社に移動しています。スタンフォードに住んでいると、肌感覚でわかることですが、テスラが今や大スターです。私は別にテスラ好きではないですが、子供たちが「テスラ、テスラ」と大はしゃぎです。
テスラがこれほど有名になる背景には何があるのか。それは、アメリカ人の環境に対する意識です。この数年で大きく変わりました。環境汚染は「悪」のように扱われています。そんな中での排ガス詐欺ですから、アメリカ人の怒りは当分、おさまらない。その一方で、テスラはますます注目を集めるでしょう。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2015年10月上旬号「フォルクスワーゲン」− 6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。