米国メディアの内情

by 西 鋭夫 June 17th, 2020

メディアの中立性


アメリカのメディアにも、いわゆる保守派と革新派というのがあります。しかし、あまりそれを露骨に出すと放送局が大問題になります。だからどちらかの政党を応援しながらも、中立の立場で分析したり、アイディアを出したりすることをしっかり行っています。

しかし、選挙が近づいてきますと、皆さんやはりイキイキしてきます。これは毎度のことです。中立は保っているが、特定の政党や政治家を支援することがあります。コラムニストと呼ばれる人たちは、自分の立場を明確にして、「この人を応援している」「共和党を応援している」「民主党を応援している」などと、書いています。それはOKです。


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大手メディアは?


世界的に有名なメディア、例えばニューヨーク・タイムズなどにおいては、事情が少し異なります。この巨大なメディアが特定の政治家や政党を応援すると、やはり大問題になります。新聞社として、「お前たちは何をやっているのだ」と批判されます。

それでもなお、ニューヨーク・タイムズはとても良い新聞だと思います。紙面を眺めると、様々な考えを持つ人々がたくさん出ている。土曜日には5センチぐらいの厚さのニューヨーク・タイムズ誌が届きますが、私はそれが楽しみです。


米国の政党政治


政治とメディアについてもう少し掘り下げて考えましょう。まずアメリカの政党について、一般的な理解を整理しておくと、民主党は「大きな政府」を、共和党は「小さな政府」を支持していると言えます。大きな政府とは、政府が税金をしっかりと集めて、それを個々人に代わっていろいろなことを行う。それによって国を良くしよう、という発想です。

共和党の主張はそれと反対で、政府の役割を小さくする一方、個々人が出来ることを増やしていきましょう。個々人の責任で物事をドンドンと進めましょう。その方が、国が栄えるのではないか、という発想です。

より端的に表現すると、民主党の考え方は、今の日本と同じようなものと言えるかもしれません。すなわち、中央省庁にお金を集めて、官僚たちが良いと決めたことにお金を使う、というシステムです。一方の共和党は、「官僚の数を減らせ」「政府も小さくしろ」「税金もそんなに集めるな」と主張します。国民一人ひとりが稼いだお金は、それぞれのお財布の中に入れるべきだ、と考えます。

共和党と民主党はよく間違えそうですが、それぞれの政党を支える哲学には大きな違いがあります。だから選挙は激戦になるのです。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年9月上旬号「米国メディア」− 3




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。