寄附に税金をかける国

by 西 鋭夫 May 13th, 2020

寄附合戦


アメリカの奨学金の資金源は国ではありません。個人と企業です。私がもらった奨学金は企業ばかりでした。個人でも、お金持ちは奨学金制度をつくられます。スタンフォードに寄附をする個人・企業はすごいです。1億、2億の規模ではありません。

最近で有名なのは、ハーヴァード大学を中退したビル・ゲイツによる、スタンフォードへの寄付です。何百億寄附したか知りませんが、おそらく100億ぐらいと言われております。ウィリアム・ゲイツ・コンピューター・サイエンス・ビルを建物ごと寄附したのです。あの美しい、大きな建物を校舎として寄附し、その中に設置したコンピューターも全て寄附しました。


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ウィリアム・ゲイツ・コンピューター・サイエンス・ビル


そうすると、ビル・ゲイツに負けまいと、一緒にマイクロソフトをつくったポール・アレンが、「俺も寄付をする」と言いました。そして、ビル・ゲイツが建てたビルの反対側に、ポール・アレンによるコンピューターサイエンスの建物を寄附したのです。そんな世界です。


母校への400億円


ところが、それでは終わりませんでした。スタンフォードには有名なビジネススクールがありましたが、その建物は古くて、汚いビルでした。私がいるフーヴァー研究所の隅っこの木の中に隠れておりました。

そこを卒業した運動靴のナイキ(NIKE)の社長が、「あんなに汚い建物は良くない。金がないのなら、僕が寄附する」と言い、約400億円寄附しました。そのお金で、新しいビジネススクールを建てました。それはもう、五つ星の高級ホテルのような建物でした。大きすぎて、何を考えているんだと、非難されているほどです。


寄附に税金をかける国


私立や、州立のワシントン大学もそうですが、そこに寄附されるお金は非課税です。税金がかかりません。税金をかける国もありますが、恥ずかしいのでその話はしません。

なぜ税金をかけるのか。速やかに税法を変えなくてはなりません。学校や公共団体、芸術団体などに寄附したお金は、無税にしなければいけません。私の収入が100あって、そのうちの10を寄附すると、税金は90にかけなければいけません。ところが、その10に対しても、収入のうちだろうといって、税金をかけるのです。だから日本は、二重に課税されるから、寄附金が少ないのです。寄附してそこに税金をかけるなんて、馬鹿げています。今の自民党は強いですから、ぜひ税法を変えていただきたいのです。これは大問題です。


プロによる資金運用


アメリカの大学は、どんどんとお金持ちになっています。アメリカの学校で一番のお金持ちはハーヴァード、その次がスタンフォードです。ハーヴァードがお金持ちなのは、スタンフォードよりも100年ほど古いからです。これからはスタンフォードが追い上げていくでしょう。

お金を持っているということは、それだけ利子がついてくるのです。この利子で奨学金制度が作れるのです。一度、寄附されてしまえば、その利子で運用ができるのです。だから元金はなくなりません。

それを運用するプロの人たちが、それぞれの大学におります。そこでちょっとドジる(失敗する)と「はい、首です」となります。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年8月下旬号「大学ランキング」− 10



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。