教育に「平等」はいらない

by 西 鋭夫 May 11th, 2020

優秀な学生を育てる方法


スタンフォード大学は、お金持ちの大学としても有名です。例えば、スタンフォードに入学する学部1年生の半分は奨学金を得ています。お金持ちの子ばかりではないのです。どうしてもお金が要る学生は、時々借金もしています。もちろん低金利の借金です。

スタンフォード大学の学生の半分は大学院生ですが、その大学院は全員が奨学生です。スタンフォードの大学院へ入学を許可された学生には、自動的に奨学金が付くのです。それだけで優秀な人材です。「私のところ(スタンフォード)でとりたいから、ハーヴァードに行かないでね」ということです。

アメリカではまた、25~26歳の人は男も女も大抵結婚しています。この後、3回ほど結婚されますけどね(笑)、アメリカは一般的に結婚する年齢が早いです。スタンフォード大学では、結婚している大学院生たちにも家族用の宿舎みたいな住宅がついてきます。結婚している人を対象とした寮というか、一軒家が3つか4つ連なって1つの群れになっています。

独身用の宿舎もあり、非常に安く入居できます。もちろん、それらは全てキャンパスの中です。だから皆さんは、自転車で教室に通っています。とにかくアメリカは、できる順からお金をあげるのです。すなわち、優秀な学生を育てるという感じです。


教育における悪平等


一方の日本は、学生たちの受け皿をつくるようなイメージです。出来ようが出来まいが、貧乏人に金をやらないと平等じゃないと考えます。これは社会主義や共産主義と同じです。教育を共産主義形式でおこなってはいけません。

学生たちは皆、平等ではないのです。才能は残酷な世界であり、才能があるか、ないか、なのです。日本人はこれを理解しないといけないのです。

私が巨人軍の3番を打ちたいと言って拒絶されたら、「なぜダメなのか」といって、裁判を起こすのですか。「平等じゃないじゃないか。俺にも権利はあるだろう」「俺は巨人の試合を何十回も見に行ったんだ」と言って、理解してもらえると思うのですか。


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夢の全額奨学金


ところが、学校や教育の現場では、全てが「平等」扱いになってしまうのです。オリンピックに出られる選手と出られない選手は、競争で決めるのです。

日本では全額奨学金というのはほとんどないです。全額奨学金がもらえるのは、18歳のときに、何かを発明したり、Amazonで売り上げ1番になる小説を書いたりと、それくらいやらないと無理なのでしょうか。

そういう学生は必死に探せばいると思います。おそらく数は少ないですが、日本には100人ぐらいいるでしょう。その100人に対して、全額奨学金を4年間、大学院に行きたいのならもうあと4年間、アメリカに行きたいなら、さらにあと4年間、全額奨学金を出してはどうでしょうか。成績が下がれば、奨学金を止めればよいのです。そこで重要になってくるのが、奨学金の資金源です。

 


西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年8月下旬号「大学ランキング」− 9




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。