日本の教育に未来はあるのか

by 西 鋭夫 May 6th, 2020

マークシート入試の弊害


今でもショックで覚えていることがあります。それは、日本の大学に教員として戻って来たときに見た「マークシート」を用いた入試です。受験生たちが記した山ほどあるマークシートが、お札でも勘定するような機械にて「カシャ、カシャ、カシャ」と処理されておりました。そして、結果が記されたロール紙を見て、「入学定員は◯◯人だからこの線まででおしまい」と言って、残りのロール紙を切り捨てていました。

その様子を見て、「この大学はやめたほうがいいんじゃないか」と正直なところ思いました。でも、日本全国、どこの大学でも同じことをやっているのです。切り捨てられた成績が下の学生たちは、もちろん番号で出ていますから名前なんて出ていません。

しかし可哀想です。こういうことをよく平気で出来るな、と思いました。


アメリカの場合


アメリカの高校4年生は、自分が行きたい大学に自動車で行くか、飛行機で行くか、家族と行くかして、そこの先生方と実際にお話をします。もう一つは、もちろんそこに入試課がありますから、そこの事務職員たちとお話をするのです。僕はこの大学に入りたいのですが、これまで◯◯◯ということをやってきましたが、どうでしょうか? この大学が求めているのは僕のような人材ですか? それともほかに何かなければいけませんか? ということを質問します。

それはもう全米でやっています。優秀な子ほど、それをします。行きたい大学は頭の中で5~6校ほど決まっていますので、夏のときにまとめて訪問するのです。日本でも、そうすれば良いのではないでしょうか。

アメリカに出来て、日本に出来ないわけがない。カリフォルニア州よりも小さい、このガラパゴスで出来ないわけがないのです。すなわち、教授の怠慢です。職員の怠慢です。18歳はロボットではありません。私たちの大切な人才です。

一方で少子化のことを心配する人もいますが、子供が少ないにしては学生たちの扱い方が雑ですね。メチャクチャな扱いをしていると思います。日本の教育はもう産業と同じように、自転車などの機械を作っているという感じがします。冗談ではありません。私はもう、日本の大学教育に激怒しております。


充実した奨学金制度


私は1964年の日本がまだ貧乏なときに、ちょうど黄金時代だったアメリカに行き、ワシントン大学の大学院に入学しました。そこで、奨学金をもらえるかなと留学生委員会に聞いたら「鋭夫ちゃん、奨学金はたくさんあるけれど、あなたはまだ授業を一つも受けていないじゃない。授業で良い成績をとったら奨学金がもらえると思うよ」と言われました。


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ワシントン大学


学期が始まると、授業についていくのがやっとでしたので、落第すれすれの「イエローカード」をもらいました。当時を振り返ると、奨学金を得ることはとても難しかったですね。ただ、「レッドカード」が出てこなかっただけでも感謝しなければいけません。

1年半が経った頃には英語も分かり、論文やレポートも良く書くことが出来ましたので、成績も高得点がもらえるようになりました。点がつき出すと、留学生委員会から審査をしてあげるから願書を出しなさいと言われました。修士号は普通2年で終わるのですが、私は3年かかりまして、3年目はあちこちから奨学金がもらえました。

修士課程を修了した後は、しばらく働き、それから博士課程に戻ってきました。そのときは英語も出来ましたし、私も少し成長していましたから、このときは自分から進んで大きな奨学金に願書を出しました。その結果、かなりのところからいろいろな奨学金をもらいました。裕福ではありませんけれど、アルバイトをしなくても1カ月生活できる額で、授業料と生活費が出ました。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年8月下旬号「大学ランキング」− 8



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。