From: 岡崎 匡史
研究室より
日本では、年間7万冊以上もの新刊が発行されている。
膨大な書籍のなかから、どの本を読めばよいのか。
選択の幅がありすぎて、選ぶことさえ困難を覚えます。いくら速読法を習ったとしても、読む本を間違っていたら、ボタンの掛け違いがずっと続いてしまう。
書店で似たような書籍が数冊あったとき、どの本を購入すればよいのか?
誰もが、質のよい、しっかりした本を選びたいはず。では、その判断基準はどこにあるのでしょうか?
本と索引
あなたの本棚から、数冊、本を手にとってください。その書籍に「索引」のページはありますか?
日本で出版される書籍は、索引のある本が少ない。書籍のジャンルにもよりますが、2〜3割くらいでしょうか。その一方で、欧米の書籍は8〜9割方、索引が付いている。アメリカでは、索引を作成する専門家まで存在します。それほど、索引を重要視し、読者の利便性を考慮して書籍を作っています。
索引は決して書籍の付属品、おまけのような扱いではありません。本の内容と一体化しているものなのです。私も自分の本を作った際は、1ヶ月もかけて索引を作成しました。
故・山本七平(1921〜1991・山本書店店主・イザヤ・ベンダサン名義で『日本人とユダヤ人』を刊行)は、「索引のない本は目のない巨人」と喩えています。
コストと思想
そもそも、なぜ、日本では索引のない本が多いのか。
「読書百遍 義おのずから通ず」という思想に体現されているように、しっかりとした読書を促すため、索引をあえてつけなかったとも考えられます。
しかし、現代の出版事情の大きな背景はコストです。索引作成に、わざわざ何週間も、そして人件費もかけたくない。早く新刊を出版し、利益を確定したい。さらに、索引を上手に作れる編集者も不足しています。
たとえ索引のある書籍でも、数日から1週間ほどで簡易的に索引が作られています。実際、索引をつくるのは、とても面倒で複雑な作業です。キーワードだけを抜き出し、Word検索をして、ページ番号を抜き出す、という単純な作業ではありません。
ですから、あなたが書籍を買うときに索引が付いていれば、その本はコストパフォーマンスが高い。そして、「索引の思想」が、出版社と著者に根付いているのかが重要な判断基準です。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・藤田節子『本の索引の作り方』(地人書館、2019年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。