宇宙と偵察

by 岡崎匡史 March 28th, 2020

blog149.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

1957年、ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク」を打ち上げた。

それまで、宇宙のリーダーだと自惚れていたアメリカは、ソ連の快挙に大ショック。

4年後の1961年、ソ連は世界で初めて有人宇宙飛行に成功。宇宙飛行士のユーリイ・ガガーリンは「地球は青かった」と有名な言葉を歴史に残した。

「スプートニクス・ショック」「ガガーリン・ショック」を受けたアメリカは、ヒステリックに陥る。

あれから60年を迎えようとしている。果たして宇宙競争はまだ続いているのでしょうか。

宇宙空間のメリット


そもそも、宇宙空間を制する軍事的利点はなにか。どんな恩恵を受けることができるのか。


(1)「越境性」:国境を越えて活動をすることができる。
(2)「広域性」:広い範囲でインフラを使えることができる。
(3)「同報性」:情報を多数に対して同時に伝達することができる。
(4)「抗堪(こうたん)性」:攻撃を受けにくい。


世界各国は宇宙のインフラを整備することで、これらのメリットを最大限に享受したい。領土・領空・領海の制限を受けることなのない宇宙は、規制を受けずに活動しやすい。航空機で偵察すれば領空違反となるが、高度200kmから400kmの軌道を回っている衛星から偵察すれば違法ではない。

情報を大切にする国ほど、この欲求を抑えることができない。とくに、アメリカは世界に展開できる軍隊を保持しており、世界中に展開する米軍と通信網を確立したかったので、宇宙開発は不可欠でした。

中国の宇宙開発


アメリカとソ連の冷戦後、途上国も宇宙開発に力を注ぎます。なぜなら、宇宙開発こそが先進国に仲間入りするための「入場券」だと、途上国は見なしてきたからです。

そんななか、中国は2003年に有人宇宙飛行(神舟5号)を成功させた。ソ連、アメリカに続き、3番目の成功だった。

中国は1992年から有人宇宙飛行計画を練ってきた。成功すれば、自国民のプライドを満たすことができるからです。メリットはそれだけではない。共産党の権威を高めることができる。さらに、ナショナリズムを刺激された国民は優越感で満たされます。

中国共産党にとって、宇宙開発は国内を安定的に治める道具でもあったのです。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・鈴木一人『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2016年)
・星山隆『日本外交からみた宇宙』(作品社、2016年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。