ホーキング博士と宗教

by 岡崎匡史 March 24th, 2018

blog59.jpgFrom:岡崎 匡史
研究室より

物理学者スティーヴン・ホーキング博士が亡くなりました。享年76歳。

私は中学校の数学で大きくつまずき、テストで36点をとってから、方程式をみるのが嫌いになりました。まして物理学なんて、高等すぎて分からない。私のように算数にでさえ拒否感のある人は、ホーキング博士の業績がいかにすごいのか、よくわかりません。

しかし、現代宇宙論は「宗教」に深く関わってきます。それは、、、

「宇宙はいかにして創生した(された)のか?」

この命題をめぐって、科学と宗教(とくに一神教)がぶつかり合うからです。

数年前、アメリカで大ヒットした映画があります。ハロルド・クロンク監督『神は死んだのか』(God's Not Dead・2014年)という作品です。

アメリカの大学で実際に起こった訴訟事件をもとに、「神の存在証明」をめぐる大激論を描いたことで話題になりました。ホーキング博士逝去のニュースを聞いて、『神は死んだのか』という映画が蘇ってきたのです。

ビックバン説 

1915年に「一般性相対理論」を唱えた天才アインシュタインは、宇宙は膨張や収縮をしない「静的」なものと捉えていました。

しかし、1929年に物理学者のエドウィン・ハッブルは、宇宙が膨張している観測結果を発表。1947年には、ジョージ・ガモフによって「ビッグバン説(仮説)」が提唱されたのです。

宇宙は膨張をしており、膨張を過去に遡っていくと、一点(特異点)に集中している。宇宙は一様ではなく密度の違う「ゆらぎ」があることも実証され、宇宙の年齢は137億年と明らかになりました。

それと同時に、光やX線も出さないダークマター(暗黒物質)やダークエナジー(暗黒エネルギー)があることも判明。天文学が取りあげている宇宙は4パーセントに過ぎず、宇宙は依然として未開な領域が広がっています。

神の一撃か科学か

ここでの大きな問題は、ビッグバンが起こる以前、宇宙はいかなる状態であったのか、ということです。ビッグバン以前、宇宙は「無」であり「時間」や「空間」は存在しなかったのでしょうか?

「無」であれば、宇宙誕生の瞬間に、膨大なエネルギーと物質が突然湧き出たことになります。この疑問に答えるのは、容易なことではありません。「科学」と「宗教」でとらえ方が違うからです。

『聖書』に書かれていることが絶対的に正しいという立場からみると、『創世記』に「神は光あれ」と記されているように、宇宙の誕生は「神の手」によるものだ。無が一瞬で形を成すなど現実には起こりえないので、人智を超えた「神の一撃」と捉える。だから、宇宙は神の意志によりデザインされているはずだ。

その一方で、科学者のホーキング博士は「宇宙は無から生成できる」「宇宙を生成して発展させるのに神に訴える必要はない」「異なる物理法則に従っているたくさんの宇宙の中の1つ」と主張。

我々は、自然の美や複雑さは神の思し召しと考えたように、科学で解決できない問題を「神」の御業と見たのかもしれない。物理学者のローレンス・クラウスは科学の発展は、「神を信じることを不可能にするのではなく、神を信じないことを可能」にするという、、、


夜空を見上げてみよう。
宇宙論をめぐって「神」と「科学」の対決が繰り広げられている。


ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ『ホーキング、宇宙と人間を語る』(エクスナレッジ、2011年)
・伊東俊太郎『変容の時代 』(麗澤大学出版会、2013年)
・ローレンス・クラウス『宇宙が始まる前には何があったのか?』(文藝春秋、2013年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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