ベトミンの反撃

by 西 鋭夫 October 18th, 2017

宣戦布告


戦勝国フランスの意のままに従うと思っていたベトナム農民が咬みついてきた。

フランスは武力を持って押さえようとする。1946年11月23日、フランス海軍は北ベトナムの港町(フランス海軍の軍港でもあった)ハイホンを砲撃し、ベトナム市民6000人を殺した。宣戦布告である。

ホー・チミンの率いるベトミンはゲリラ戦で抵抗する。資源の多いベトナムを手放したくないフランスは、アメリカの最新兵器に支えられながらも、裸足のベトナム農民に勝てない。

冷戦を戦っていたソ連は、アメリカやフランスを天敵とみなしていたので、べトミン・ゲリラに武器弾薬を送り始めた。

戦争の激化に拍車がかかる。


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ベトミンにより占拠されたサイゴンのアメリカ大使館


CIAの暗躍


アメリカは、フランスが共産主義勢力に敗れると、全ヨーロッパと全アジアが将棋・ドミノ倒しのようにバタバタと共産主義にむしばまれるのではないかという恐怖を強く抱いていた。

ここに、設立されたばかりの巨大な米国スパイ機関・CIAが登場する。CIAの金で秘密に雇われた、戦い好きの米民間人パイロットたちは、機関銃の付いていないB52爆撃機に乗り、北ベトナムへ爆弾投下を開始した。

米国議会の議員たちにも知らされていなかったCIAによる「秘密戦争」だ。

撃ち落とされるB52も数多く、未だに900名以上が行方不明。パイロットたちは、身分証明になるようなものは一片も身につけていなかったので、米政府は北ベトナムの抗議を全て否定した。

スパイ戦で死んでゆく者たちに墓はない。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第2章「アメリカの怨霊・ベトナム」−7



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。