講和の既成事実化

by 西 鋭夫 March 3rd, 2017

基地問題の起源


この2日後、5月8日、吉田首相も日本人記者たちと自由党本部で会見し、社会党や、共産党や、南原東大総長が全力で推し進めている「全面講和」を完全に無視し、「米国などとの単独講和は事実上すでにできている。これをまず締結におしすすめるべきである」と断言した。

日本独立後の基地問題については、吉田は

「軍事基地ということが最近よく問題にされているようだが、多くはソ連の受け売りにすぎないようだ。......まだ一度も(アメリカから)設定の申入れに接したわけでもなく、条約の草案を見たわけでもないので何ともいえない」

と逃げている。

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偉大なる対日援助


5月10日、吉田は外務省で記者会見をし、

「現在のように政治、経済の安定しているときでなければ早期講和は望むべくもない。独立を回復し、国際社会の一員となるときの一日も早く来ることを国民は一致念願している」

と言い、また、外務大臣を務めた時の終戦直後を振り返り、

「そのころは総司令部の対日政策がどんなものか分からなかった。......しかし、アメリカの対日援助がこのように手厚いものであるのは予想外というべく、現に事実上の講和態勢は着々進んでいるのである」

と再度、「単独講和」の既成事実を売り込んだ。


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。