局長詣で

by 西 鋭夫 February 27th, 2017

ニュージェントの怒り


5月17日、天野はニュージェント局長を訪れた。天野は、イールズの学問の自由についての講演で、学生と教職員が騒ぎたてた北海道大学と新潟大学事件に関して深く陳謝した。

ニュージェントは、「文部大臣の責任ではない」と慰め、「しかし、私の考えを言わせていただきたい。これを私の命令と解釈しないで欲しい」と前置きし、強い怒りをぶちまけた。

⑴ 「学生は言論の自由を口に唱えながら、その行動により他人の言論の自由を拒否している。まるでギャングスターのようだ」



ヒトラーのギャング一味


⑵ 「これらの学生は、ゲシュタポなどに頼っていたヒトラーのギャング一味と少しも違いはない。彼等は言論の自由を阻止するため徒党を組んでいる。共産党員は言論の自由を云々するが、実は戦時中のような全体主義国家に日本を追いやらんとするものだ」

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⑶ 「戦後の日本の教育の大きな発展の一つは、大学の自由と自治である。しかし、この大学の自由は、一切の他の自由と同様に、責任を伴う。大学は......一般社会に対する責任を持っている。何故なら国立大学は、一般社会の払う税金により支えられているからである」



哲学徒への牽制


⑷ 「学生がいかなる政治哲学をも研究する自由と権利を持っていることを、何人も争うものではない。もし学生が研究中に、愚かにも共産主義を信ずるようになれば、自分はそれらの学生を気の毒に思う。しかし学生が組織体を作り、他の学生の言論の自由を禁止するような活動を行なうならば、哀れみの情とは別な感じを持たざるをえない」

⑸ 「自分は、いかなる措置を取れとアドバイスはしない。ただ大学が新しい自由に伴う責任を履行すべきことを強調したい。そうでなければ大学は自由を失い、共産主義や全体主義に支配されてしまうであろう」



恭順


「仰せの趣旨はすべて心から同感です」と天野は答えた。

ホイットニーとニュージェントとの会談後、天野文相は共産主義的教授は徹底的に追放されるべきだと宣言した。


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。