イールズ妨害事件の真相

by 西 鋭夫 February 10th, 2017

全学連の抵抗


イールズは、学生や教授たちの反対を、「小さいが、よく組織された少数の共産主義者が多数の意思を妨げ、大学を擁護していると見せかけ、実際には学園の自由を破壊妨害しているもの」と罵った。

事実、5月2日に予定されていた東北大学での講演は、全学連が中止に追い込んだ。

吉田首相も5月9日の記者会談で、東北大学でのイールズ妨害事件について、

「真相調査を命じておるので、いきさつがはっきりしてから政府としても対策を講ずることになろう。しかし、およそ学生というものは無邪気であるべきで、共産党の反対の立場にある人の話だから妨害するというのはおかしい」

と言明した。


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東北大学の様子(1910年代)



学生処分


さらに、吉田首相は5月11日、全国検事長たちを首相官邸に招待し、お茶会を催し、

「共産党については最近、民主主義の仮面をかぶって治安を乱すものがややもすればあるようだが、これらには監視を厳重にして治安を乱すものは断固取り締まってもらいたい」

と要請した。

6月22日、北海道大学は、イールズ事件に関し、学生4名を退学処分にしたし、4人を無期停学にした。


追い風


イールズにとって幸いだったのは、彼が日本で共産主義と闘っている最中に朝鮮戦争が起こったことだった。

戦争に勇気づけられ、彼は反共教育論を伝道的な情熱を持って、全国の大学で、赤色教授と全学連を追い出せと要求し続けた。彼の売り物は、民主主義であるが、売り方は、共産主義者と同じように、独善的であり、非妥協的であった。

日本が共産主義者に屈服する可能性は皆無であったが、恐怖が掻き立てられ、レッドパージは猛威をふるい、日本社会の深層までも浸蝕していった。



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。