暗殺の瞬間
バイデン政権もトランプ政権も、国民の「知る権利」を侵害しているわけですが、実際は侵害どころか、もう完全に保身だと思います。皆さん、これはもう「隠す」というよりも、「絶対に出せない」という姿勢です。ですから、これからも関係の薄いところを少しずつ出してくるかもしれませんが、核心部分は絶対に出てこないでしょう。そこには、きっといろいろな名前が出ていると思います。もしかしたら自分の親戚かもしれません。
あれほどの大事件、あそこまで周到に計画された暗殺は、近代アメリカ史上ほかにありません。皆さん、リンカーン暗殺事件はご存じだと思います。彼の場合は劇場の後ろから犯人が入り、すぐ背後から拳銃で撃たれて捕まりました。しかしケネディさんの場合はまったく違います。真っ昼間のオープンカー、隣にはジャクリーン夫人が座っていて、手を振る人々の歓声の中です。ケネディさんは当時、ものすごい人気者で、まるでハリウッド・スターのようでした。
私も映像を何度も見ましたが、最初に頭をガーンと撃たれ、血がパーッと飛びます。その後にダーンという音がして、自動車は前へ進んでいるのですが、その後方80メートルほど離れた場所から、旧式のイタリア製ライフルで狙撃されたように見えました。いや、「よく当たったな」という距離と条件です。動く的に命中させるのは本当に難しい。そして次の銃声でケネディさんの頭が大きく動きました。そうなると、銃弾は前から来たことになります。ところが、その話は長い間、公式には出てこなかったのです。
法律と権力
アメリカでは1992年に「JFK暗殺記録収集法」という法律が成立し、25年以内にすべての文書を公開することが定められました。ところが、2017年にトランプ元大統領は公開予定だった文書の一部を延期し、全面公開を4年後に見送りました。そして2022年、本来なら公開されるはずだった「ケネディ文書」は、今度はバイデンさんの手によって再び延期されました。
では、2人の大統領を動かす何らかの力があったのか。当然だと思います。皆さん、これは普通の力ではありません。トランプさんとバイデンさんは性格も主義もまったく違い、お互い大嫌いなはずです。その2人が「ケネディ暗殺の調査文書は出さない」という一点で手を組んだ。これは相当な力が働いています。FBIでしょうか、CIAでしょうか、それとも別の組織でしょうか。普通の話ではありません。
そして、その力の根っこをたどれば、きっと犯人につながります。しかし、その犯人に近づけば近づくほど、自分が暗殺される。そういう世界です。だからおそらく、バイデンさんもトランプさんも「これ以上は俺が危ない」と考えたのでしょう。
トランプとバイデン、唯一の共通点はここです。「ケネディ暗殺の文書は公開しない」としっかり握手をしているのです。何かが怖いのです。間違いありません。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ケネディ神話の崩壊(2022年2月下旬号)-2
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。