第三次世界大戦

by 西 鋭夫 July 10th, 2025

一触即発

今回のタンカー事故ですが、米国はこれを裏で操っているのは「イランしかない」と考えております。まだはっきりとしたことは分かっていませんが、トランプ大統領はもう完全にイランを敵視しております。そんな中、「トランプさんが何か軍事的に動いてくれるのではないか」と期待しながら見ている国があります。イスラエルです。この国はイランを潰したくてうずうずしております。

9月には新たな事件が起きました。サウジアラビアの油田が攻撃されたのです。誰がやったのか。真相はまだ分かっておりませんが、米国ではイランが大きく敵視されております。中東といえば、皆さん、戦火にまみれた地域という印象があるでしょう。しかし、その中でもサウジアラビアは比較的「安全な国」とされてきた。ところが今回、そのサウジアラビアで事件が起きてしまったのです。これは極めて象徴的な出来事だと考えた方が良い。

もうこれで、色々な「平和の方程式」がガラガラと音を立てて崩れ始めています。これは間違いありません。イスラエルが動くのか、サウジアラビアが動くのか分かりませんが、もし動いたら、それはもう止まりません。サウジアラビアはアメリカから大量の武器を購入しています。非常に裕福な国です。もしその武器を使ってイランの船を攻撃したら、事態はさらにエスカレートするでしょう。

 

ボルトン解任劇

サウジアラビアが攻撃を受ける前に象徴的なことがもう一つ、米国内で起きました。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の解任です。彼が首になった瞬間、サウジアラビアが攻撃されました。あまりにもタイミングが良すぎる。

あのボルトンさんは、トランプ大統領に対して「早くイランを叩いてください」と、延々と1年間、言い続けてきた人です。ところが、トランプ大統領は戦争をしたくない。「アメリカ・ファースト(America First)」だからです。経済に悪影響を与えることは避けたい。アフガニスタンからも引き揚げたいわけです。

ボルトンという人は、いわゆる「タカ派中のタカ派」でして、悪いやつは戦争でやっつける。アフガニスタンもコテンパにやっつける。特に石油をたくさん持っていて、それを資金源に世界中でテロ活動をやっているイラン、あそこを叩くべきだ、とそう主張してきました。そのボルトンさんをトランプが「こいつは、もうこんなことばかり言っている。戦争の話ばかりだ。おまえはクビだ」とやった。

 

イランの賭け

これはイラン側からするとどのように見えるのか。恐いアドバイザーがいなくなった。これで戦争は回避されるかもしれない、と考えたかもしれません。その後、サウジアラビアの巨大油田が攻撃され、火を噴いたのです。あれは宇宙からでも見えるほどの大火災でした。

イランは「これぐらいやっても、トランプは戦争を仕掛けてこないのではないか」と思ったのかもしれません。

この賭けがどう出るか。まだ分かりませんが、皆さん恐ろしい時代に入ってきましたよ。水とトイレットペーパーくらいは買っておかれた方がいい。以前にも石油が少し高くなっただけで、買い占め騒動が起きました。けれども今回は石油の値上がりではなく、「本物の攻撃」です。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
日本の底力(2019年9月下旬号)-5

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。