薬害エイズ事件

by 西 鋭夫 January 9th, 2025

ミドリ十字

731部隊で活躍した人材は戦後になって大学に戻ってきましたが、研究所や製薬会社に再就職した先生方もおられます。その731部隊ですが、日本ではしばらく忘れ去られておりましたが、薬害エイズ事件で再び注目されることになりました。日本の大手医薬品メーカー「ミドリ十字」が、血友病患者に対して、非加熱製剤治療を行ったことで1,800人ものエイズ患者を生み出したのです。

私はこのメーカーをしっかり覚えております。この会社は、石井四郎の右腕で内藤良一というお医者さんが作ったものです。その会社は当初、日本で初めての民間血液会社で、「日本ブラッドバンク」という名前でした。

戦後の日本は貧しさを通りと越しておりましたから、若いお兄ちゃんやお姉ちゃんたちはお金がなくなると血液を売っていました。その血を集めて、輸血用の血を売る会社を立ち上げたのです。ブラッドバンクは1960年代、その商号を「ミドリ十字」としました。

 

大罪

ミドリ十字の犯罪は、アメリカが「エイズが入っているかもしれない薬だから危ないよ」と警告していた薬をたくさん購入し、これを血友病の患者に注射したわけです。そうすると性的な経験のない人までもがエイズにかかってしまいました。

日本で大騒動になりました。歴史を知る私からすると、石井四郎の右腕の内藤先生ですが、どれだけ金儲けをしようとしたのか、血友病患者をマルタのように考えていたのではない、と考えてしまいます。

輸血は必要だったからどうしようもありません。しかしその後が良くなかった。

 

満州人材

なぜこんなことができたのか。ミドリ十字には満州で一緒に働いたお兄ちゃんやおじさんたちが多く働いておりました。731部隊の幹部が作った会社です。その上下関係は絶対的なものだったのでしょう。顧問も取締役も731部隊所属者でした。ミドリ十字が厚生省の天下り先の一部になっていたことも明らかになっております。

一般の人々には手出しの出来ない、戦中から続く731部隊の亡霊が戦後の日本社会にも非常に大きな影響を与えたのです。コロナが流行り、ワクチンが大量に製造されたこの時代を考える上で、731部隊の経緯やその後の展開を知ることは、極めて重要なことだと思われます。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
731部隊とウィルス研究(2020年9月上旬号)-7


 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。