ハリウッドの政治力
ハリウッドは全世界に対して大きな影響力を持っております。映画を通してメッセージを伝えることができるからです。そのハリウッドが資金不足に陥り、莫大な額のチャイナ・マネーが入り込んでいるとしたら、皆さんは何を思いますか。そこにあるのは中国共産党の広告塔としてのハリウッドの姿です。
少し考えてください。最近ハリウッドで作られた映画の中で、日本で大ヒットしたものはありますか。以前に比べ、その数は少なくなってきたのではないでしょうか。
とはいえ、チャイナ・マネーの影響は映像やストーリーに露骨に現れてくるわけではありません。中国に対して優しいメッセージとか、褒めたたえるメッセージとか、そういったものが私たちの精神状態や心理状態にスーッと溶け込んでいくようなシナリオを作るわけです。
実際、ハリウッド映画の中で領土問題とか天安門事件など、非常にセンシティブな問題が出てくることはありません。おそらく今の中国ですと「そんなものは作るな」という方針になっていると思います。あるいは「そのシナリオの版権を私が買います」そしてシュレッダーでボツにします。続いて「そのコンピュータも頂戴。ボツにしますから」ということかもしれません。チャイナ・マネーはそれほど強力なのです。
報道戦略
中国はハリウッドだけではなく、報道機関を巻き込みながらマスコミ対策やプロパガンダを行っていると考えられます。怖いと思うかもしれませんが、それは国際政治上、ある意味当然でしょう。
アメリカも同じようなことをバンバンやっております。それは今になって始まったものではありません。私がまだアメリカの大学院生だった頃、アメリカの国務省は日本の著名な新聞記者やテレビ放送記者などを招待してアメリカ・ツアーを行っておりました。いわゆる「アメリカの良い所を見てくれ」というやつです。賢いやり方だと思いました。いちいち注文をつけないで「アメリカを見てください」という形だからです。
これを今、中国がやっているわけです。おそらく日本からも親中派と思われている新聞記者やテレビアンカーたちが呼ばれています。アメリカからももちろん呼ばれているでしょう。それで中国に行くと素晴らしい通訳者たちが待っておりまして、良い所をワサーっと見せて、悪い所も少しだけ見せてと、そんなやり方で中国ツアーを行っていると思われます。これをプロパガンダというのか、接待というかわかりませんが、とにかく賢い洗脳戦略だと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
ハリウッドとプロパガンダ(2020年7月上旬号)- 3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。