
From:岡﨑 匡史
研究室より
年齢を重ね、世俗の「名誉と富」を手に入れた人が、最後に欲しいもの。
それが勲章であると云われている。
なぜなら、お金持ちにとって、勲章はお金を出して買うことができない。
さらには、勲章には社会的に高い「名誉」まで伴っている。
日本の勲章の歴史を遡ると、名誉ある勲章を断る、辞退した人物もいる。
福澤諭吉
慶應義塾の創設者・福澤諭吉(1835~1901)は、栄典を嫌い、徹底して避けた。
福澤諭吉は「迷惑」だと述べて、叙勲を断っている。
『福翁自伝』で勲章制度を次のように批判した。
「車屋は車を挽き、豆腐屋は豆腐をこしらえ、書生は書を読むというのは人間当たり前の仕事をしているのだ」「その仕事をしているのを政府が誉めるというなら、まず隣の豆腐屋から誉めて貰わなければならぬ」
芥川龍之介
小説家の芥川龍之介(1892~1927)は、さらに辛辣な批判をしている。
「軍人の誇りとするものは必ず小児の玩具に似ている。緋縅(ひおどし)の鎧や鍬形の兜(かぶと)は成人の趣味にかなったものではない。勲章もわたしには実際不思議である。なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩かれるのであろう?」
福沢諭吉や芥川龍之介のように、勲章をあざ笑う人もいる。
たしかに、勲章の種類によって、人間に「一等」「二等」などと区別をつけるのはおかしい。人間の値打ちを人間が決めることは、失礼極まりない。
しかも、勲章を受けるのは、高級公務員が多く、民間は少ない。
政治家や公務員は、もともと公共の為に働くのが仕事であって、相応の報酬を得ている。それなのに、膨大な税金を使って勲章で顕彰する必要があるのだろうか。
そんななかで、首相経験者では、宮澤喜一、細川護熙は勲章を辞退している。
ー岡﨑 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・小川賢治『勲章の社会学』(晃洋書房、2017年)
・栗原俊雄『勲章 知られざる素顔』(岩波書店、2011年)
この記事の著者
岡﨑 匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡﨑 匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

