国際社会の行方
米中の覇権争いが激化する一方、コロナウイルスの世界的な蔓延により社会はどんどんと内向きになってきております。こうした中、国際社会は今後、どこへ向かっていくのでしょうか。
予測は非常に難しいと言わざるを得ませんが、国際社会が閉じた方向に向かっていることは確かだと思います。みなさん、イギリスはすでにユーロ圏からの脱退を表明しましたね。トランプ政権も気候変動に関わる国際的な枠組みから脱退しました。
この間は「ユネスコにお金を払うのはもう嫌だ」と、そしてWHOについても「脱退したい、お金を出したくない、あいつらは中国の手先だ」と言っています。
農業大国
アメリカは鎖国しても孤立しても食っていけると思っているのですが、それは錯覚です。食っていけません。商業活動がドシャっと潰れます。
アメリカは農業をベースとした国です。アメリカを旅行されたら分かると思いますが、大きな町は西はシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、東はボストン、ニューヨーク、アトランタ、マイアミという感じです。真ん中にシカゴとデトロイトがあります。あとは皆さん、ほとんどが農場と草原、家畜と考えて良いでしょう。
それだけの農業国なのでそれらを売らなければいけません。一番買ってくれるのは人口の多い国、すなわち中国です。中国は米国に対して「いらない、うちは豚が好きだけれど、アメリカの豚は嫌い」などと言うのではないでしょうか。
トランプさんが政権を継続すると、そういう死活問題に関わる経済戦争をやりますよ。ミサイルを使わない戦争ですが、日本も含めアジア各国は大打撃を受けます。
中国の出方
では中国はこの動きにどう対応するのでしょうか。中国は独裁国ですから、よっぽど上手く統制を進めなければ、国民の痛みが反映されて暴動が起こります。そうすると共産党は危ないと思って習近平さんをリーダーの座から引きずり落とそうとするかもしれません。
習近平さんはそれを望んでいないでしょう。しかし米中関係においてはもはや後ろに引けない状況となってしまいました。米政権と経済的に徹底して戦っていくと思います。
日本の立ち位置はさらに難しいと言えるでしょう。難しいのを通り越して不可能のレベルかもしれません。安倍さんは外交がお上手だったなど言われていますけれど、日本に何のメリットがありましたか。経済的にも安全保障上でも日本は窮地に立たされております。
西鋭夫のフーヴァーレポート
日米同盟の未来(2020年10月上旬号)- 5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。