北朝鮮問題
新型コロナウィルスの陰に隠れて、朝鮮半島に関する問題が私たちの意識から遠ざかっているように思われます。しかし、予断を許さない状況に違いはありません。今年(2020年)に入ってから、弾道ミサイルがすでに4回も発射されております。
北朝鮮問題の関係国はもちろん韓国だけではありません。アメリカ、日本、そして中国、ロシアもあります。そんな中、私は北朝鮮に関わる問題は、未来永劫に続くのではないか、と考えています。
南北朝鮮を見ますと、同一民族でいがみ合い、殺し合いを繰り広げてきたわけです。この恨みは互いに骨の髄まで達しております。戦争も休戦状態であり、いまだに終結してはおりません。アメリカでは南北戦争がありましたが、そのアメリカでさえ、現在も北と南は仲がよくありません。戦争は1864年から1868年まででしたが、それから100年以上経ってもそうなのです。
歴史的変遷
それぞれの国の関係性も複雑です。朝鮮戦争で戦った南北朝鮮ですが、ほんの十数年前に遡ると、もちろん分断などされておりませんでした。朝鮮半島は一つの地域であり、そこに住む人々は仲間同士だったわけです。その彼らが一同に敵視したのは日本帝国です。日本の占領に抵抗して一緒に戦ってきたのです。中国もこれを支援しました。
第二次世界大戦が終わると、今度は一斉に日本叩きを始めます。歴史が複雑なので言い方は難しいのですが、単刀直入に言えば、彼らは自分たちを「戦勝国」であると認識していることでしょう。「自分たちは日本と一緒に負けたのではない。我らは、一緒に戦って日本を打ち負かした」とくるのです。そして日本の戦争犯罪を厳しく追及するのです。
しかし話はそれで終わりませんでした。朝鮮が独立すると思っていたら、今度はそこにソ連が入ってきて、次に毛沢東率いる共産党までもが入ってきました。朝鮮戦争の勃発です。これにより、朝鮮半島は38度線で分断され、今もなおその分断が続いております。60年、70年と経っておりますが、未だに戦争終結の可能性はほとんどありません。何千回と様々な話し合いがあったのだと思いますが、この二つは分断されたままです。
米朝首脳会談
複雑に絡み合った関係性の中で、朝鮮半島はどのように決着するのか。北と南はいつの日か統一するのか。
まずアメリカですが、この国はこの問題に関与しているように見せかけて、その内実はほったらかしでした。そこに現れたのがミスター・トランプです。トランプ大統領はミサイルをどんどん撃ちまくるあの北朝鮮の金さんを何としないといけない、ミサイル発射をやめさせないといけない、と本気で考え、具体的な行動にでました。それが米朝首脳会談として結実したわけです。
大統領選挙が今年の11月にありますが、トランプさんが勝たれたら、その後におそらく4度目の会談を持つでしょう。もちろんトランプさんが選挙に勝利した場合の話です。その会談はかなりハードな交渉になると予想されますが、トランプ大統領は「金さん、いい加減にやめろよ。その代わり、経済発展をさせてあげるよ」と言うのではないか、と私は考えています。
西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想(2020年4月上旬号)-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。