年間2兆円
危険性のあるたばこですが、なぜやめられないのか。中毒性と広告業について話をしてきましたが、最後の一つはお金です。たばこはいろいろと儲かるのです。これは吸う人の話というより、たばこが売れることで利益を得る側の話です。
代表例は税金です。たばこによる税収については、あまり知られていないようですが、年間で2兆円を超えております。しかもこれは、景気にほとんど左右されませんから、安定した税収となっております。
では皆さん、なぜ、たばこ税が生まれたのか。たばこのように、よく売れるものはもちろん他にもたくさんありますが、なぜたばこに「税」がかけられているのでしょうか。
明治維新
答えは明治維新のお兄ちゃんたちです。明治時代、人々にはこれといった娯楽がありませんでしたから、皆さんこぞってたばこを吸っておりました。江戸時代から吸われていましたが、明治になり爆発的に広まり、庶民の生活に深く入り込んでいきました。それで「これは収入になるのではないか」と、税金をかけることになったのです。
明治8(1875)年から「たばこ税」が導入されます。頭のいいことをしたなぁと思います。何もしなくとも税収がどんどんと入ってくるのですから、こんな楽な話はないでしょう。たばこによる税収は、明治政府の国家予算の1割を占めるほどとなりました。国民が吸えば吸うほど、国にお金が入る仕組みが出来上がったのです。
日清戦争の戦費の一部もたばこ税からです。出来たばかりの新政府を支えたのはまさに、たばこだったのです。
税の秘密
明治政府はたばこの他にもいろいろなものに税をかけています。砂糖や酒、そして塩にもかけておりました。しかし今も残っているのはお酒とたばこですね。
たばこの値段が年々、高くなっているでしょう。今では500円ほどするそうですが、その中身についてご存知でしょうか。国の税金、都道府県の税金うんぬん、消費税も入れて、500円のうちおそらく400円は税金です。たばこ作りにかかる費用は100円ほどなのです。
あまり顕在化はしていませんが、この税にも興味深い政府内対立があります。厚生労働省と財務省です。厚生労働省は日本人の健康を守ろうとするでしょう。でも財務省にとってはたばこ税が入らなくなると困るわけです。JTの筆頭株主はどこか知っていますか。財務省です。財務省はお金を握っていますから、厚生労働省が「吸うな」と言えば、「うるさいぞ、調子に乗るなよ厚生労働省」といった感じです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
タバコ利権とファシズム(2020年2月上旬号)-3
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。